医師になってしばらくですが、色々なことがありました。
まだまだ経験年数も浅いですが、これから目指す人にとって一つの参考になればいいなと思って記録に残します。
あくまでも個人的な感想になることをご容赦ください。
医師になってよかったこと
臨床が楽しい
とにかく実際の医療は楽しいですね。
患者さんの話を聞いて、実際自分の経験や知識を用いて治療にあたることは好きだと思います。
病気にもよりますが、患者さんが元気になっていく姿を見ると嬉しいですね。
医者になるための勉強は大変でしたが、実は医師になってからのほうがもっと大変だということには働き始めてすぐに気づきました。
しかし座学だけではなく、実際に働きながら学ぶことが多くなるので机にかじりつく感じではないですね。
また実臨床をすることで年々できることが増えている自分にも気づくのでそこが楽しいです。
手技が楽しい
私は消化器内科を普段専門にしていますが、内視鏡検査に携わることが多いです。
というかほぼ毎日何かしら検査を行っています。
これに関しては専門科によって変わるところがあるかとは思います。
外科であれば手術のイメージが強いですが、内科は手技が少ないところもあるでしょうか。
「消化器内科」とは内科とつくものの検査をしたり、早期のがんの手術をしたりと意外と体を動かすことが多いです。
いわゆる体育会系なのでスポーツ同様、しっかりとした練習が必要になってきます。
患者さんには申し訳ないのですが、最初はしんどい思いをさせてしまうこともたくさんありました。
ただ、経験を重ねるうちに「全然しんどくなかった」と声をかけてもらうこともあり、そういう時はとても報われた感じがします。
給与は良いところ
イメージとしては一番強いところではないでしょうか。
医者=高給取り、というのはいつの時代も言われてきてる事かと思います。
実際医師の時給はおおよそ5000円~10000円程度は大体のところであると思います。
一般的な時給が1000円前後であることを考えれば、当然そういった認識になりますよね。
ただし、後述するように決して定時で帰れることはなく、休みがあいまいだったりすることもあるので労働時間、拘束時間を考えるともう少し安そうかなとは思っています。
ただし、今でも病院にいるだけで何もしなくても一日10万前後をもらえたりもするので、金銭的に恵まれていることは確かですね。
色んな場所で働ける
医師はいろいろな病院で働くことが多いです。
私も転々と病院を1年毎に動いたりしていました。
病院によって働き方が変わったり、できることも違ったりするので、そういやって経験を積んでいくことになります。
もちろんずっと根無し草では大変ですが、特に経験年数が浅いときにはそういう働き方をする医師が多いと思います。
番外編 コロナ検診
このコロナ禍でワクチン接種に際して医師のバイトがニュースになっていますね。
時給1.5万~3万程度で、20万円以上一日で稼ぐことも可能なバイトです。
内容としても一切の専門知識は不要で、まさにフリーランス医師の荒稼ぎ無双が行われています。
(現在は相場も少し落ち着いてきていますがそれでも、時給1万円以上はどこもありそうです)
まじめに常勤で医師をしている人ってなんなの、、、っていう感じにもなっちゃいますが、現実はこのコロナ禍で補助金のおかげなどで黒字転換できている病院も少なくないようです。
悪かったこと
休みがない
とにかく休みは普通のサラリーマンの方に比べるとありません。
週休2日とは夢のまた夢、、、オンコールなどで気が休まらないことも。
休みは絶対ないと無理!という方には向いていない仕事ですね(もちろん専門科や勤務時の条件などで変更はできますが、働き始めてからしばらくは難しいかと思われます)。
当直が辛い
医師の業務でつらいものの代表が当直です。
いわゆる夜間の病院の救急外来や、入院中の患者さんの対応を行う仕事です。
日中はスタッフの数がいたりするので困らないことも、夜間であれば一人で全部しないといけなかったり、専門外の対応をしないといけなかったりとかなり負担のかかる業務です。
人によってはこの業務が好き!っていう人もいますが、私はいつになっても慣れないですね。
むしろ年々年齢を重ねるごとにきつくなってますね。
数の多い外来
外来診療というのもなかなかの負担になります。
一日に何十人という患者さんを、限られた時間内に診療しないといけません。
時に緊急で初診の患者さんを見ることもあり、たくさんの時間をお待たせすることもあります。
経験と共にうまく立ち回っていくことができますが、初期のころは精神的、体力的に大きな負担になっていました。
特に後述するようなモンスター患者、家族が来院された日にはへとへとになることが多いですね。
圧倒的な年功序列
医者の世界はいまだに年功序列が幅をきかせています。
実働部隊の若い医者は安い給料でコキを使われることが多く、逆に一日中休憩しているようなベテラン医は2倍、3倍の給料をもらっていることは珍しいことではありません。
先述した当直業務ももちろん免除されており、業務内容は臨床から離れている方も多いようです。
もちろん年代と共に仕事内容が変わっていくことは仕方ないことですが、事務員と雑談をしているだけの医師が自分よりも高給をもらっていることを知ると何とも切ない気持ちになりますね。
自分の落ち度のないモンスター患者
診療をしていると、いくら丁寧に説明を行っても理解されずに自分の意見だけを何とか通そうとする患者さんやその家族が来院されることがあります。
特に医者ではなく、看護師や立場の弱い医療職の方に強く当たる傾向が多いです。
そういった患者さんは「モンスター」であり、どういったことを説明しても無駄に終わります。
本当に治療が必要な患者さんの時間を奪ってしまうので、病院側としてブラックリストなどで対応することが多いですが、結局そういう患者を受け入れる病院は存在するので、最終地点での病院で働く人たちに大きく負担をかけていることが多いです。
同様にモンスター医者
患者にモンスターがいるように、医師にもモンスターと化してしまったケースもあります。
患者さんの話に耳を一切傾けず、自分のしたいような治療を推し進めたりしています。
こういった医師は実は医学的には優秀な医師が多いように感じます。
私が知っているような偉い先生の日常診療が「えっ」驚くような対応をされて悩まれている患者さんは少なくありませんでした。
若手の医者を奴隷と勘違いしているような扱いをしている医者もいたりと、医者の当たりはずれは働いていると本当に実感します。
私が心がけていること
患者の目線で話をする
患者さんは基本的に病気のことは何も知りません。
いきなり病気といわれて不安に感じることも多いですし、私自身患者さんになればそうだと思います。
教科書では病気というのは一律化された対応が書いてありますが、そこは人間と人間なのでその患者さんに沿った治療内容を考えるのが医師の仕事です。
そのために患者さんのお話を聞いて、患者さんの目線で考えるように心がけています。
知識は確保しつつもわかりやすさを心がける
医師として優しいだけでは不十分です。
しっかりと現在の医療のスタンダードというのは常にアップデートしていかないといけません。
その上で、自分の中に手札をたくさん用意して患者さんへ説明します。
説明は専門用語でお話ししてはだめで、可能な限りわかりやすく、何度も理解できるか確認しながらすすめていくようにしています。
先述のモンスター医者は専門用語のオンパレードで、理解が全く追いつかないまま説明、治療をされ、不本意な状態になっている患者さんをたくさん見てきました。
医者が患者さんを選ぶことができないように、患者さんは医師を選ぶことは難しいです。
しかしセカンドオピニオンなどの制度も利用して、可能な限りモンスター医者のお世話にならない患者さんが今後増えていくことを願います。
人は必ず死を迎えます。
医者はたくさんの死とかかわることが多く、私も今までたくさんの数を経験しました。
生前どんな立場になった人でも、最終的なゴール(死)は同じなんだなと、頭でわかっていても、経験の中でより確固たるものと感じることがあります。
これはお金をいくら積んでもできない経験かな、と思っています。
病気についてのことを学ぶ、死についてを深く考える、これはきっと医者になってなければ私は思うことがなかったでしょう。
いくらお金を持っていても経験できないことをできる仕事、それが「医者」という仕事なんです。