B型肝炎、「昔治ったから大丈夫」が危ういわけ——ワクチンと再活性化の話
「B型肝炎?若い頃にかかったけど、もう治りましたよ」——外来でこう言う人は多い。だが、B型肝炎は「治った」と思っていても、条件がそろうと再び暴れ出すことがある。しかも、無症状のまま静かに進むことも多い。
一方で、B型肝炎はワクチンで防げる肝炎でもある。防ぐ手段があるのに、大人での接種は広く知られているとは言えない。「昔の病気」で片付けるにはもったいない——正しく知っておきたいテーマだ。この記事では、B型肝炎の基本と、ワクチン・再活性化という2つの大事なポイントを整理する。
この記事でわかること
・A型・B型・C型肝炎の違い
・「一度治ったから安心」ではない理由(再活性化)
・ワクチンで防げること、検査を受けてほしい理由
B型肝炎とは——血液・体液で感染し、静かに進む
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)による肝臓の感染症だ。血液や体液を介して感染する(母子感染、性交渉、過去には注射器の使い回しなど)。やっかいなのは、感染しても長く無症状のことが多く、気づかないうちに肝臓の炎症が続く場合があることだ。
慢性の炎症が長く続くと、一部は肝硬変や肝臓がんへ進むことがある。だからこそ、症状がなくても「知っておく・調べておく」ことに意味がある。
A型・B型・C型は、どう違う?
ひとくちに「肝炎ウイルス」といっても、A型・B型・C型で、感染経路もワクチンの有無も治療も違う。ざっくり整理すると、こうなる。
特にポイントは、ワクチンがあるのはA型とB型で、C型にはないこと。そして治療の考え方も、C型が「飲み薬でウイルスを排除して治す」のに対し、B型は「薬でウイルスを抑えてコントロールする」のが基本だ。C型については「C型肝炎は治らない」はもう古いにまとめている。
大人の感染と、赤ちゃんの感染は意味が違う
B型肝炎は、感染した時期によって経過が大きく変わる。
- 大人になってからの感染:多くは急性肝炎として経過し、その後ウイルスが排除されて治る(慢性化するのは数%ほどとされる)。ごく一部は重症化することもある
- 赤ちゃん・幼少期の感染:免疫が未熟なため、ウイルスを排除しきれず「キャリア(持続感染)」になりやすい。無症状のまま長く経過し、一部が慢性肝炎へ進む
だから、母子感染を防ぐことがとても重要になる。今は出生時の対策(ワクチンなど)で母子感染は大きく減っている。
外来でよくある誤解:「一度治ったから、もう関係ない」
ここが、いちばん知っておいてほしいポイントだ。B型肝炎は、過去に感染して「治った」ように見える人でも、一部の人では、ウイルスの遺伝子が肝臓の細胞の中に残っていることがある。
普段は免疫が抑えているので問題にならない。だが、がんの化学療法や、強い免疫抑制の治療(リウマチ・膠原病の薬など)を受けると、抑えが外れてウイルスが再び暴れ出すことがある。これを「B型肝炎の再活性化」といい、ときに重い肝炎を起こす。
そのため、日本肝臓学会のガイドラインでも、こうした治療の前にはB型肝炎の検査(スクリーニング)を行うことが推奨されている。「昔治ったから関係ない」と自己判断せず、治療を受けるときは過去のB型肝炎のことを主治医に伝えてほしい。
B型は「ワクチンで防げる」タイプ
B型肝炎の大きな特徴は、ワクチンで予防できることだ。日本では乳児の定期接種になっているが、大人でも接種できる。
特に、医療・介護の仕事で血液に触れる機会がある人、家族やパートナーがB型肝炎キャリアの人などは、接種を検討する価値がある。防ぐ手段があるのは、C型にはないB型の強みだ。
検査と、「キャリア」と言われたら
B型肝炎は無症状で進むことがあるため、一度は肝炎ウイルス検査(血液検査)を受けておくことがすすめられる。自治体の肝炎ウイルス検査などを活用できる。
もし「キャリア」と言われても、すぐ慌てる必要はない。多くは定期的なフォロー(肝機能・ウイルス量・腹部エコーなど)で経過を見て、必要なら薬でコントロールする。肝臓がんの早期発見のためにも、定期検査を続けることが大事だ。肝機能の数値の見方は健診の「肝機能異常」、どの数値が高いかで意味が違うを、肝臓全般の負担については「脂肪肝です」と言われたまま放置している人へもあわせてどうぞ。
よくある質問
Q. B型肝炎ワクチンは、大人も打てますか?
A. 打てる。特に、血液に触れる仕事の人や、家族・パートナーがキャリアの人などは接種を検討する価値がある。詳しくは医療機関で相談してほしい。
Q. 昔かかって治りました。もう心配いりませんか?
A. 多くは治って免疫がつくが、ウイルスの遺伝子が肝臓に残り、強い免疫抑制やがん治療のときに「再活性化」することがある。そうした治療を受ける際は、過去のB型肝炎を必ず主治医に伝えてほしい。
Q. 「キャリア」と言われました。家族にうつりますか?
A. 血液や体液を介してうつるが、握手や食事などの通常の接触ではうつらない。家族はワクチンで予防できる。まずは定期的なフォローを続け、家族の接種について主治医に相談するとよい。
まとめ
B型肝炎は、ワクチンで防げる一方、「一度治った」あとも再活性化することがある——この2つがいちばん大事なポイントだ。無症状で進むことも多いので、一度は肝炎ウイルス検査を受けておきたい。
覚えておいてほしいのは、がん治療や強い免疫抑制の治療を受けるときは、過去のB型肝炎を主治医に伝えること。そして、防げるタイプだからこそ、リスクのある人はワクチンを検討すること。「昔の病気」で片付けず、上手に付き合っていきたい。
参考
・日本肝臓学会 B型肝炎治療ガイドライン
・日本肝臓学会 免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン
・厚生労働省 肝炎対策・予防接種関連資料
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年08月
