外来で「食べ物がつかえることはありますか」と聞くと、「いえ、特に」と答える人がいる。ところが、食べ方をくわしく聞いていくと話が変わってくる。「よく噛まないと不安で」「いつも水で流し込んでいます」「家族でいちばん食べるのが遅いです」「そういえば、肉はあまり食べなくなりました」——。

本人は「つかえない」と思っている。でもそれは、つかえないように食べ方を工夫しているからかもしれない。こうした人の中に、好酸球性食道炎(こうさんきゅうせい しょくどうえん)という病気が隠れていることがある。

この記事でわかること
・好酸球性食道炎がどんな病気で、逆流性食道炎とどう違うのか
・「症状がない」と思っている人ほど見直してほしい、食べ方のサイン
・診断と治療の考え方、すぐに受診すべき場面

好酸球性食道炎は、食道に好酸球が集まって起きる慢性の炎症

好酸球は白血球の一種で、アレルギー反応に深く関わっている細胞だ。好酸球性食道炎は、この好酸球が食道の粘膜に集まり、慢性の炎症を起こす病気である。炎症が続くと食道の壁がむくんだり硬くなったりして、食べ物が通りにくくなる。

食べ物などに対する2型アレルギー性の炎症が関わっていると考えられている。ただし、花粉症や一般的な食物アレルギーのように、血液のアレルギー検査で原因がわかる病気ではない(くわしくは後で書く)。

  • 日本の報告では、30〜60代の男性に多い傾向がある。ただし、子どもから高齢者まで起こりうる
  • ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギーの病気を持つ人に多いとされる
  • 日本でも報告数は増える傾向にある。実際に患者が増えているのか、病気が知られて見つかる機会が増えたのかは、単純には分けられない

逆流性食道炎とは別の病気。ただし、重なることもある

名前は似ているが、逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流して粘膜を傷つけることが中心の病気だ。一方、好酸球性食道炎は好酸球による炎症が中心にある。ただし両者は同時に起こることもあり、胃酸を抑える薬で良くなったからといって、好酸球性食道炎ではないとは言い切れない。胸やけのような症状が出ることもあって紛らわしいが、つかえ感が目立つのが特徴のひとつだ。逆流性食道炎については、「胸焼けが続く」は逆流性食道炎かもで詳しく書いている。

外来でよくある誤解:「症状はありません」——でも、食べ方で調整していることがある

大人の好酸球性食道炎で中心になる症状は、食べ物がつかえる感じだ。ただ、この病気は長い時間をかけて進むことが多いため、体のほうが先に食べ方を変えて、つかえを避けるようになっていることがある。本人にとっては昔からの習慣なので、「症状」だと思っていない。

こんな食べ方、していませんか つかえを避けるための「無意識の工夫」かもしれない ひと口ごとに水やお茶で流し込む よく噛まないと飲み込むのが不安 食べるのがいつも人より遅い 肉やパンなど、特定の食べ物を避けている 食べ物を小さく切ってから口に入れる

もちろん、よく噛むこと自体は悪い習慣ではない。気にしてほしいのは、「そうしないと飲み込めない」「やめるとつかえる」という場合だ。こうした工夫がいくつも当てはまり、飲み込みにくさを感じるなら、一度消化器内科で相談してみてほしい。アレルギーの病気を持っていることは手がかりのひとつになるが、なくても否定はできない。

つかえる感じの原因は、好酸球性食道炎だけではない。だんだん悪くなるつかえ、体重の減少、貧血、胸の痛みなどがある場合は、腫瘍を含めた原因を調べる必要がある。原因の全体像は食べ物がつかえる・飲み込みにくい——「歳のせい」で片付ける前に確認したいことにまとめた。

なお、子どもでは年齢によって症状の出方が違い、つかえを言葉で訴えるよりも、吐く、食べたがらない、食事に時間がかかるといった形で現れることがある。気になるときは小児科に相談してほしい。

診断は、症状と胃カメラ、組織の検査で

胃カメラで食道の粘膜を観察すると、食道の縦方向に走る溝、輪っか状の溝、白い点状の付着物、粘膜のむくみ、食道が狭くなっている様子などが見られることがある。

ただし、見た目だけでは確定できない。一見正常に見えることもあるため、粘膜を何か所か採って(生検)、好酸球が一定数以上集まっているかを顕微鏡で確認する。国内の診断基準では、つかえなどの症状があることと、生検で好酸球が基準以上(顕微鏡の1視野あたり15個以上)見られることの両方がそろって診断される。胃カメラの流れや準備については、胃カメラのすべてにまとめてある。

健診の胃カメラで、症状がないのに指摘された場合

日本では、健診の胃カメラで、この病気を疑う所見や食道の好酸球の増加が、はっきりした症状のない人に見つかることがある。ただ、症状がない場合は、国内の診断基準の上では典型的な好酸球性食道炎とは区別して扱われる。こうした人をいつ治療すべきか、どう経過を見るべきかは、まだ十分にわかっていない。

だからこそ、本当に症状がないのかを確かめることに意味がある。「つかえない」と思っていても、先ほどの食べ方の工夫をしていることがあるので、受診したときには食べ方のことも含めて伝えてほしい。

治療は、病状に合わせて選ぶ

日本では、まず胃酸を抑える薬(PPI)で治療の反応を見ることが多い。アレルギーの病気なのに胃酸の薬、というのは意外に思えるかもしれないが、PPIには胃酸を抑える以外の働きで、食道の好酸球の炎症を抑える可能性があると考えられている。複数の研究をまとめた解析では、PPIで症状が改善した人は約6割、組織の炎症まで治まった人は約5割と報告されている。ただし研究ごとに対象や薬の量、判定の基準が違うため、効き方には個人差がある。長く飲むことになった場合の考え方は、その胃薬、何年も飲み続けていませんかで書いた。

PPIで効果が十分でない場合には、より強く胃酸を抑える薬(P-CAB)が検討されることもある。ほかに、次のような治療が主な選択肢になる。どれを選ぶかは、症状の強さ、内視鏡や生検の所見、食道が狭くなっているかどうか、生活への影響などを踏まえて決める。

  • ステロイドを「飲み込んで」食道に効かせる方法:ぜんそくの吸入薬などを、吸い込まずに飲み込み、食道の粘膜に直接作用させる
  • 食事療法:原因になりやすい食べ物を一定期間除いて、反応を見る。栄養の偏りや生活への負担が大きいため、消化器内科・アレルギー科・管理栄養士などと相談しながら進める
  • 内視鏡で広げる処置:食道が線維化して狭くなっている場合に行う

なお、2020年の国内ガイドラインの時点では、好酸球性食道炎そのものに保険適用となっている薬はないとされていた。近年は新しい治療薬の研究も進んでいる。実際にどの薬が使えるか、保険でどう扱われるかは、主治医に確認してほしい。

「アレルギー検査をすれば、原因の食べ物がわかる」わけではない

アレルギーが関わる病気と聞くと、「血液検査で原因の食べ物を調べて、それを避ければいい」と考える人は多い。しかし好酸球性食道炎では、血液検査や皮膚のテストだけで原因の食べ物を正確に決めることは難しいとされている。検査で疑わしいと出た食べ物を除いても、うまくいかないことが多い。検査の結果だけを根拠に、自己判断で食べ物をあれこれ抜くのは避けてほしい。

放っておくと、どうなるのか

炎症が長く続くと、食道の壁が硬くなり、狭くなっていくことがある。診断までの期間が長いほど、食道が狭くなっている人の割合が高いという報告もある。治療の目的には、今の症状を和らげることに加えて、将来の狭窄を防ぐことも含まれている。

また、慢性に経過する病気で、治療をやめると再び悪くなることがある。治療を続けるか、減らしたりやめたりを試すかは、症状、内視鏡や組織の所見、狭窄や食べ物が詰まった経験の有無などを踏まえて、主治医と個別に決めていく。

こんなときは受診を

すぐに救急受診(夜間・休日でも)
・食べ物がのどや胸に詰まって、下りていかない
・つばも飲み込めず、口からあふれてくる
・胸の強い痛みがある
・息が苦しい、声が出しにくい、意識がぼんやりする場合は、迷わず119番
※詰まったものを、水や食べ物で無理に押し流そうとしない

早めに消化器内科を受診
・食べ物がつかえることを繰り返している
・つかえが、だんだん悪くなっている
・体重が減ってきている

一度相談を
・健診の胃カメラで、好酸球性食道炎(またはその疑い)と言われた
・この記事の食べ方のチェックに、いくつか当てはまる
・飲み込みにくさが気になる(アレルギーの病気があればなおさら)

よくある質問

Q. 健診で言われましたが、症状はありません。治療は必要ですか?

A. 症状がない場合、国内の診断基準の上では典型的な好酸球性食道炎とは区別して扱われ、治療が必要かどうかはまだ十分にわかっていない。どうするかは、内視鏡や生検の所見、食道が狭くなっていないかなどを踏まえて、専門の医師が判断する。「症状がない」と思っていても食べ方で調整していることがあるので、受診したときには食べ方のことも含めて伝えてほしい。

Q. 好酸球性食道炎は治りますか?

A. 治療で炎症や症状を抑えることはできるが、慢性に経過し、治療をやめると再び悪くなることがある。治療を続けるか、減らしたりやめたりを試すかは、症状や検査の結果を踏まえて主治医と相談しながら決めていく。

Q. 食べてはいけないものはありますか?

A. 全員に共通して禁止される食べ物はない。食事療法を行う場合も、消化器内科・アレルギー科・管理栄養士などと相談しながら進める。アレルギー検査の結果だけを頼りに自己判断で食べ物を除くと、栄養が偏るうえに、原因にたどり着けないことも多い。

まとめ

  • 好酸球性食道炎は、食道に好酸球が集まって起きる慢性の炎症。逆流性食道炎とは別の病気だが、重なることもある
  • 「つかえない」と思っていても、水で流し込む・よく噛む・特定の食べ物を避けるなど、食べ方で調整していることがある
  • 診断は症状と胃カメラ、組織の検査で。健診で症状のない人に見つかった場合の扱いは、まだ定まっていない
  • 治療は日本ではPPIから始めることが多いが、局所ステロイド・食事療法・拡張術なども病状に応じて選ぶ。アレルギー検査だけで食べ物を除去しない
  • 食べ物が詰まって、つばも飲み込めないときは救急へ。息苦しさがあれば119番

最終更新:2026年11月

参考
・厚生労働省 好酸球性消化管疾患研究班「幼児・成人好酸球性消化管疾患 診療ガイドライン」(2020年) https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/EGIDs_guideline.pdf
・難病情報センター「好酸球性消化管疾患(指定難病98)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/3935
・阿部靖彦、佐々木悠、上野義之「好酸球性食道炎の診断と治療の進歩」日本消化器内視鏡学会雑誌 2019;61:225-242 https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/61/3/61_225/_html/-char/ja
・Hirano I, et al. AGA Institute and the Joint Task Force on Allergy-Immunology Practice Parameters Clinical Guidelines for the Management of Eosinophilic Esophagitis. Gastroenterology. 2020.
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。

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消化器内科医2桁年目。胃腸・内視鏡・当直の話から、家事・時短・車・投資まで。忙しい人の暮らしを少しラクにする情報をゆるく発信。