胃潰瘍・十二指腸潰瘍——市販薬で様子を見ていい人と、すぐ受診が必要な人の違い
胃が痛いとき、市販薬で様子を見ていいのか、それとも受診すべきか迷う人は多い。
胃薬を飲んで1〜2日様子を見ていた、という人がほとんどだ。それで治まることもあるが、胃潰瘍・十二指腸潰瘍だった場合、放置すると出血や穿孔(穴が開く)という重篤な状態になることがある。
この記事でわかること
・胃潰瘍と十二指腸潰瘍の違いと主な原因
・すぐ受診が必要なサインと、様子を見ていい目安
・治療の流れとピロリ菌除菌の重要性
胃潰瘍と十二指腸潰瘍、何が違うのか
どちらも胃酸が粘膜を傷つけて「潰瘍(えぐれ)」ができる病気だ。違いは場所だけで、メカニズムは共通している。
胃潰瘍は胃の壁にできる。食後に痛みが出やすい。十二指腸潰瘍は胃の出口の先(十二指腸)にできる。空腹時・夜中に痛みが出やすいのが特徴で、食べると一時的に楽になることがある。
若い人は十二指腸潰瘍が多く、年齢が上がるにつれ胃潰瘍が増える傾向がある。
主な原因
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因として大きな割合を占める菌だ。ピロリ菌が胃の粘膜を慢性的に傷つけ、潰瘍が繰り返しできやすい状態を作る。除菌治療をすると再発率が大きく下がる。
ピロリ菌について詳しくは→ピロリ菌、除菌した方がいい?
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
ロキソニン・アスピリン・イブプロフェンなどの痛み止め・解熱鎮痛薬だ。胃の粘膜を守るプロスタグランジンという物質の産生を抑えるため、長期・大量服用で潰瘍ができやすくなる。整形外科や循環器科でNSAIDsを処方されている人が胃痛を訴えるケースは外来でよく見る。
ストレス・喫煙・アルコール
直接の原因というよりは悪化要因だ。胃酸分泌を増やし、粘膜の防御力を下げる。
外来でよくある誤解
「市販の胃薬を飲んだら痛みが引いたから治った」と思っている人が多い。
市販の制酸薬や胃粘膜保護薬は症状を一時的に和らげるが、潰瘍そのものを治しているわけではない。特にピロリ菌が原因の場合、除菌しない限り潰瘍は繰り返す。「また胃が痛くなった」を何度も繰り返している人は、一度胃カメラを受けてほしい。
すぐ受診が必要なサイン
以下のいずれかがある場合は速やかに受診が必要だ。
- 黒い便・タール便が出ている(出血のサイン)
- 吐血した
- 突然の激しい腹痛(穿孔の可能性)
- 貧血症状(立ちくらみ・動悸・息切れ)
- 痛みが強くなっている・薬を飲んでも改善しない
- 体重が急に減った
黒い便は消化管出血のサインだ。潰瘍から出血すると、腸を通る間に血液が変色して黒くなる。痔の出血と混同されやすいが、タール状の黒い便は別物なので受診が必要だ。
また、高齢の方や抗血小板薬・抗凝固薬を内服している方は、症状が軽くても早めの受診を勧める。出血リスクが高く、重症化しやすいためだ。
様子を見ていい目安
以下をすべて満たしていれば、数日様子を見ることも選択肢になる。
- 黒い便・吐血がない
- 痛みが軽度で日常生活に支障がない
- 市販薬でいくらか症状が和らいでいる
- 体重減少・貧血症状がない
- 高齢者・抗血栓薬内服中ではない
ただし1週間以上続く場合や繰り返す場合は受診を勧める。
治療の流れ
胃カメラで潰瘍を確認し、ピロリ菌検査を行うのが基本だ。
治療の中心はPPI(プロトンポンプ阻害薬)という強力な胃酸抑制薬だ。潰瘍の治癒を促す。ピロリ菌が陽性であれば除菌治療を行い、再発を防ぐ。NSAIDsが原因の場合は薬の見直しと胃粘膜保護薬の併用を検討する。
胃カメラについて詳しくは→胃カメラを怖がる人が知らない、たった一つのこと
よくある質問
Q. 胃潰瘍と胃がんの違いはどうやって分かりますか?
A. 胃カメラで生検(組織を取って調べる)を行います。見た目だけでは区別が難しいケースもあるため、潰瘍が見つかった場合は必ず生検を行うのが原則です。治療後の再検査で確認することも重要です。
Q. ピロリ菌を除菌したら潰瘍は再発しませんか?
A. 除菌に成功すると再発率は大きく下がります。ただし除菌後もNSAIDsの服用・喫煙・ストレスが続く場合は再発することがあります。除菌後の定期的な胃カメラも推奨されています。
Q. 胃潰瘍は食事制限が必要ですか?
A. 厳しい食事制限は必須ではありませんが、胃酸分泌を増やす食べ物(香辛料・アルコール・コーヒー・炭酸)は症状を悪化させることがあります。治療中は控えめにするほうが無難です。
まとめ
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、市販薬で症状が和らいでも根本的に治っているわけではないことが多い。特にピロリ菌が原因の場合は除菌しない限り再発を繰り返す。
黒い便・吐血・突然の激しい腹痛は緊急サインだ。繰り返す胃痛・長引く症状がある人は一度胃カメラを受けることを勧める。
みぞおちの痛みの原因について→「みぞおちが痛い」は胃だけの問題じゃない
参考
・日本消化器病学会 消化性潰瘍診療ガイドライン
・日本ヘリコバクター学会 ガイドライン
・国立がん研究センター がん情報サービス
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年5月
