吐いて下してつらいとき、家でどうすればいいか——水分のとり方と受診の目安
急に吐き気がきて、下痢も止まらない。いわゆる「お腹の風邪」と呼ばれる急性の胃腸炎は、夜中や休日に始まることが多い。すぐに病院に行けない状況で、家で何をすればいいのか——外来でもよく聞かれることだ。今日は、急性の胃腸炎で家でできる対処と、迷ったときの受診の目安を整理したい。
この記事でわかること
・吐き気が強いときの水分のとり方
・食事をいつ、どう戻していくか
・すぐ受診したほうがいいサイン
いちばん大事なのは、脱水を防ぐこと
急性の胃腸炎で一般に問題になりやすいのは、吐き気や下痢そのものよりも脱水だ。ウイルス性胃腸炎の多くは数日で自然に軽快していくため、その間を脱水させずに乗り切ることが対応の中心になる。逆に言えば、水分がとれているかどうかが、家で様子を見られるかの分かれ目になる。
とる水分は、水やお茶だけよりも、塩分と糖分がバランスよく入ったもののほうが吸収されやすい。症状が軽ければ手元のスポーツドリンクなどで始めてもよいが、下痢や嘔吐が強く脱水が心配な状況では、経口補水液のほうが適している。スポーツドリンクは糖分が多めで塩分が少ないためだ。
外来でよくある誤解:「吐くから、水も飲まない」
「飲んでも吐いてしまうから、何も口にしていません」——これは外来でとてもよく聞く。気持ちはよく分かるが、これが脱水を進めてしまう。コツは、量ではなく飲み方にある。
吐き気が強いときは、一度にコップ1杯を飲むのではなく、スプーン1杯程度(5〜10mL)を5〜10分おきに少しずつという飲み方が目安になる。胃に一気に入ると吐き戻しやすいので、ちびちびと時間をかけて入れていく。これなら吐き気が強くても意外と入ることが多い。吐いた直後は、30分ほど胃を休めてから再開するとよい。ただし、適した量やペースは年齢や症状の程度によって異なるため、特に乳幼児や高齢の人では、心配なときに自己流で粘らず医療機関に相談してほしい。
食事はいつから、何を食べるか
かつては「長く絶食して腸を休ませる」と言われることもあったが、今は食べられそうなら早めに、消化のよいものから戻していく考え方が一般的だ。おかゆ、うどん、バナナ、すりおろしりんごなど、やわらかくて刺激の少ないものを少量から試すとよい。
逆に、しばらく控えたほうがよいのは、脂っこいもの、乳製品、アルコール、カフェイン、香辛料の強いものだ。アルコールは胃腸に負担をかけるので、症状が落ち着くまでは休んでおきたい。食欲がなかなか戻らないこともあるが、その間も水分だけは切らさないようにしてほしい。
下痢止めは、自己判断で使わないほうがいい場面がある
「早く止めたい」と市販の下痢止めに手が伸びるのは自然だが、急性の胃腸炎では注意が必要だ。下痢は、体が原因となるウイルスや細菌、その毒素を外に出そうとしている反応でもある。これを強い薬で無理に止めると、かえって回復が遅れたり、状態を悪くしたりすることがあるとされる。特に細菌性の食中毒が疑われる場面や、血便・高熱・強い腹痛を伴う場合は、自己判断で下痢止めを使わず医療機関に相談してほしい(医師から指示が出ている場合は、その指示に従ってよい)。まずは水分をしっかりとることを優先したい。
受診したほうがいいサイン
次のような場合は、家で粘らずに受診してほしい。特に前半は緊急性が高い。
- 吐き気が強く、水分がまったく口にできない
- 強い腹痛が続く、痛みがどんどん強くなる
- 血便が出る、高熱が続く
- ぐったりしている、意識がはっきりしない
- 尿が半日以上ほとんど出ていない、口の中がカラカラに乾く
- 高齢の人、乳幼児、持病がある人、妊娠中の人(脱水が進みやすいので早めに)
逆に、水分がとれていて、少しずつでも落ち着いてきているなら、家で経過を見られることが多い。また、症状が2週間以上と長引く場合は、単なる急性の胃腸炎ではない可能性も出てくるので、続く下痢の記事もあわせて参考にしてほしい。
よくある質問
Q. スポーツドリンクでもいいですか?
A. 症状が軽ければ、何もないよりはよい。ただしスポーツドリンクは糖分が多く塩分が少なめなので、下痢や嘔吐が強く脱水が心配なときは経口補水液のほうが適している。手元にあるもので始めて、可能なら経口補水液を用意するとよい。
Q. 家族にうつさないためにできることは?
A. こまめな手洗いが基本だ。吐物や便を処理するときは使い捨て手袋とマスクを使い、処理後は手を石けんでよく洗う。ウイルスによってはアルコール消毒が効きにくいものもあるため、流水と石けんでの手洗いを丁寧に行うことが大切だ。タオルの共用も避けたい。
Q. 何日くらいで治りますか?
A. 原因によるが、ウイルス性のものは数日で軽快することが多い。ただし、症状が長引く場合や、いったん治まったのにぶり返す場合、また上に挙げた受診サインがある場合は、自己判断せず医療機関で相談してほしい。
最終更新:2026年9月
参考
・厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A
・国立感染症研究所 感染性胃腸炎 関連資料
・日本小児救急医学会 関連資料(経口補水療法)
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
