お酒で顔が赤くなる人は、知っておいたほうがいいことがある
ビールを一口飲んだだけで顔が真っ赤になる。動悸がして、頭が痛くなる。そういう体質の人は日本人に少なくない。多くの場合それは「お酒に弱い」という話で片づけられ、本人も「飲めない体質だから」と受け止めている。だが消化器を診る立場から言うと、この体質にはもう一つ、知っておいてほしい側面がある。今日はその話をしたい。
この記事でわかること
・お酒で顔が赤くなるのはなぜか
・その体質と食道がんリスクとの関係
・どう付き合っていけばよいか
顔が赤くなるのは、アセトアルデヒドのせい
体に入ったアルコールは、まず「アセトアルデヒド」という物質に分解され、さらに酢酸へと分解されていく。このアセトアルデヒドが、顔の紅潮や動悸、頭痛、吐き気の正体だ。分解を担う酵素(ALDH2)の働きには生まれつき個人差があり、この働きが弱い人がいる。
日本人を含む東アジアの人には、この酵素の働きが弱いタイプが比較的多く、日本人ではおよそ3〜4割程度と言われている。飲むとすぐ顔が赤くなる、いわゆる「フラッシング反応」が出る人は、このタイプである可能性が高い(ただし、赤くなるかどうかだけで確定できるわけではない)。いずれにせよ顔の赤さは、体内にアセトアルデヒドが溜まっているサインでもある。
外来でよくある誤解:「弱いだけだから、鍛えれば飲める」
「若い頃は飲めなかったけど、飲んでるうちに強くなった」という話をよく聞く。実際、飲み続けると顔が赤くなりにくくなることはある。だがこれは、酵素の働きそのものが強くなったわけではない。飲酒を重ねることで体が慣れ、症状を感じにくくなる(中枢神経側の反応が鈍くなることなども関わるとされる)だけで、アセトアルデヒドを分解する力が改善したとは限らない。
ここが押さえておきたいところで、症状が出にくくなったぶん、以前より多く飲めてしまうという状況が生まれる。処理が追いつかないまま量だけが増えると、体内でアセトアルデヒドにさらされる機会はむしろ増えることになる。「鍛えて強くなった」という自己認識には、この点で注意が必要だ。
アセトアルデヒドと、食道がんのリスク
ここからが本題だ。飲酒に伴って生じるアセトアルデヒドは、発がん性があると位置づけられている物質だ。そして、この酵素の働きが弱い体質の人が習慣的に飲酒を続けると、食道がん(扁平上皮がん)のリスクが高くなることが報告されている。特に、喫煙が加わるとリスクはさらに上がるとされる。
つまり、「昔は顔が赤くなったが、今は飲める」という人は、体質は変わらないまま飲酒量が増えている可能性があるグループにあたる。ここを知らずに「自分は飲めるようになったから大丈夫」と考えてしまうのは、避けたいところだ。
なお、逆流性食道炎から食道がんに至るルートは、これとは別の種類の食道がん(腺がん)が中心の話になる。飲酒・喫煙が関わるのは主に扁平上皮がんのほうで、日本ではこちらが多いとされる。同じ「食道がん」でも、背景が異なることは知っておくとよい。
では、どう付き合えばいいか
体質そのものは変えられない。だから、できることは飲み方のほうを調整することになる。
- 量を増やさない、頻度を上げない:慣れてきたからと量が増えていくのが、いちばん避けたいパターンだ
- 喫煙を避ける:飲酒と喫煙が重なるとリスクはさらに上がるとされる。この体質の人にとって、禁煙の意味は特に大きい
- 自分の体質を知っておく:飲んで赤くなるか、若い頃どうだったかは、それ自体が有用な情報になる
- 症状があるときは調べる:食べ物がつかえる、飲み込みにくいといった症状が続くときは、胃カメラで確認しておきたい
アルコールが体に与える影響全般については、肝臓・胃・大腸への影響をまとめた記事で整理している。今回の話は、そのなかでも「体質によってリスクの出方が違う」という一点に絞ったものだと考えてほしい。
脅かしたいわけではない
誤解しないでほしいのは、「赤くなる人は絶対に飲むな」という話ではないということだ。付き合いで少し飲む程度なら、過度に不安になる必要はない。伝えたいのは、同じ量を飲んでも、体質によって背負うリスクが違うという事実だ。
そして、「昔は赤くなったけど今は平気」という人ほど、この話を知っておく価値がある。自分の体質を踏まえたうえで飲み方を選べるなら、それがいちばんいい。知らないまま量が増えていくのだけは、避けてほしい。
よくある質問
Q. 自分がその体質かどうか、調べられますか?
A. 遺伝子検査やパッチテストなどで調べる方法はある。ただ、日常的には「飲むと顔が赤くなるか」「若い頃はどうだったか」が実用的な手がかりになる。特に、若い頃に赤くなっていたかどうかは重要な情報だ。
Q. 顔が赤くならなければ、いくら飲んでも大丈夫ですか?
A. そうではない。赤くならない体質でも、飲酒量が多ければ肝臓をはじめ体への影響は出る。今回の話は「赤くなる体質の人は特に注意したい」という趣旨であって、赤くならない人が無制限に飲んでよいという意味ではない。
Q. 今からでも減らす意味はありますか?
A. ある。飲酒量を減らすこと、禁煙することは、いずれもリスクを下げる方向に働く。すでに長年飲んできた人でも、今後の量を見直す意味は十分にある。
最終更新:2026年10月
参考
・国立がん研究センター がん情報サービス(食道がん)
・厚生労働省 e-ヘルスネット(アルコールの代謝・体質)
・厚生労働省 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
