「もう痛みは治まりました。……で、これ、また来ますか?」

大腸憩室炎の治療が終わったあと、外来でいちばんよく聞かれるのがこれだ。痛みが強かった人ほど、「またあれが来るのか」という不安が残る。気持ちはよく分かる。

この記事では、治ったあとの話だけを書く。憩室そのものが何なのか、症状はどうだったか、という話は大腸カメラで「憩室があります」と言われたまま帰ってきた人へにまとめてあるので、そちらを読んでほしい。

この記事でわかること
・憩室炎はどれくらい再発するのか(実際の数字)
・「治ったのに、なぜまた大腸カメラ?」の理由
・食事をいつ、どう戻していくか

再発率を、数字で見るとどうなるか

まず率直に答える。憩室炎は再発することがある。ただ、多くの人が想像しているほど「しょっちゅう繰り返す」わけでもない。

報告されている再発率は、こうだ。

  • 1年で約8%
  • 5年で約17%
  • 10年で約22%

ただし、この数字はそのまま自分に当てはまるものではない。再発率は、憩室炎の重症度、膿瘍などの合併の有無、年齢、体の状態、そして「どこまでを再発と数えるか」の定義によって変わる。これはあくまで、ある集団を追跡した報告のひとつだと思ってほしい。

そのうえで、この数字には「10年経っても8割近くの人は再発していない」という読み方もできる。「一度なったら一生繰り返す病気」ではない、ということだ。

外来でよくある誤解:「治ったのに、なんでまた大腸カメラ?」

これは本当によく言われる。「もう痛くないのに、なんでまた検査するんですか」と。

理由ははっきりしている。CTで「憩室炎」に見えた所見が、実は大腸がんだったということがあり得るからだ。

急性期のCTでは、腸の壁が厚くなり、周りに炎症が広がっている像が写る。ところが大腸がんでも、似たような見え方をすることがある。炎症が強い時期は、その区別が難しい。

実際にどれくらいの頻度なのか。報告によれば、憩室炎のあとに大腸がんが見つかる割合は全体で約2%。ただしこれは一律ではなく、膿瘍や穿孔などの合併症を伴った場合は約8%、合併症のない軽いものでは約1%と差がある。低い数字ではあるが、ゼロではない——だから確かめる、という話になる。

時期としては、急性の症状が完全に治まってから、6〜8週間以上あけて行われるのが一般的だ。急性期に無理に入れるのではなく、腸が落ち着くのを待つ。

つまりこの検査は、「憩室炎の治療がまだ終わっていないから」ではなく、「別のものが隠れていないかを確かめるため」のものだ。ここが分かると、受ける気持ちがだいぶ違うと思う。

全員が必ず受けるわけではない

必要かどうかは、いくつかの条件で変わる。

  • 初めての憩室炎か、合併症を伴ったか——どちらも検査を勧められることが多い
  • 1年以内に、きちんとした大腸カメラを受けているか——受けていて、短期間でのフォローが必要な所見もなかったなら、省かれることがある
  • 気になる症状があるか——便が細くなった、血便が出る、貧血を指摘された、体重が減っている。こうしたものがあれば、6〜8週を待たずに早めの検査が検討される

大腸カメラそのものについては大腸カメラのすべて|怖い・費用・準備・結果までにまとめている。

憩室炎が治ったあとの流れ ① 発症〜急性期 ・症状に合わせて消化のよいものにする(状態によっては一時的に食事を控えることも) ・必要に応じて抗菌薬。症状の改善に合わせて食事を進めていく ② 症状が落ち着いてから ・通常の食事へ段階的に戻す。繊維は急に増やすと張るので少しずつ ・急性期の制限をそのまま何年も続ける必要はない ③ 症状が完全に治まってから6〜8週間以上あけて ・大腸カメラで「大腸がんが隠れていないか」を確かめることがある ・1年以内に受けていれば省かれることも/気になる症状があれば早めに ④ その後 ・再発率は1年で約8%、5年で約17%、10年で約22%と報告されている ・確実に防ぐ方法はないが、食事・体重・運動・禁煙などが勧められている 治療後でも、こういうときは受診を ・お腹の痛みがぶり返した/だんだん強くなっている/発熱を伴う ・お腹全体が痛い/血便/冷や汗・ふらつき/吐いて水分がとれない → 救急も検討 ※これは一般的な流れの目安であり、実際の方針は重症度や経過によって変わります

食事は、急性期と回復後で進め方が変わる

ここが、いちばん混乱しやすいところだと思う。

炎症が起きている急性期は、症状に合わせて消化のよいものにすることが多い。状態によっては一時的に食事を控えることもある。ただしこれは「治療として絶食が必須」という意味ではなく、症状の程度に応じた対応で、良くなってくれば食事を進めていく。

そして炎症が落ち着いたあとは、通常の食事に戻していってよい。ここがいちばん伝えたいところだ。

というのも、急性期に言われた「繊維を控えて」を、そのまま何年も守り続けている人がいるからだ。あれは炎症が起きている時期の話であって、一生続けるものではない。むしろ極端な食事制限を長く続けることのほうが、体にとってよくない。

戻すときのコツは「急がない」

ただし、回復したからといって一気に繊維を増やすと、お腹が張って苦しくなることがある。体調を見ながら、少しずつ戻していくのが現実的だ。

  • まずはおかゆ、うどん、白身魚など消化のよいものから
  • 痛みや発熱がぶり返さないことを確認しながら、通常の食事へ
  • 落ち着いてきたら、野菜・海藻・きのこ・豆類などを少しずつ増やす
  • 水分もあわせて摂る。繊維だけ増やして水分が足りないと、かえって出にくくなる

具体的にいつから何を、というのは重症度や経過によって変わる。担当医から指示が出ているなら、それが最優先だ。

再発を減らすためにできること

先に正直なところを書いておく。再発を確実に防ぐ方法は、現時点では確立していない。日本のガイドラインでも、再発予防について「確実性の高い有効な方法はない」という趣旨で整理されている。

そのうえで、生活面の対策として勧められているものはある。

  • バランスのよい食事——野菜・果物・全粒穀物・豆類などを含む食事が勧められている
  • 適正な体重を保つ
  • 体を動かす
  • 禁煙
  • 痛み止め(NSAIDs)を日常的に飲み続けない——定期的な使用は避けるよう挙げられている。ただし持病の治療で処方されている場合は、自己判断で中止せず処方医に相談を

並べてみると、特別なことは何もない。食事・体重・運動・禁煙という、ありふれた生活面の話に落ち着くということだ。

なお「便秘をなくせば再発しない」と考える人がいるが、便秘を治すことで憩室炎の再発が減る、とまでは示されていない。便通を整えること自体は生活の質にとって意味があるので、気になる人はその便秘、様子見でいい?——受診したほうがいい”危ない便秘”の見分け方を読んでみてほしい。ただし「再発予防のため」と気負う必要はない。

治療後でも、こういうときは受診を

治療が終わったあとでも、次のようなときは様子を見ずに受診してほしい。再発や合併症の可能性がある。

  • お腹の痛みがぶり返した——日本では右下腹部に出ることも多い。左とは限らない
  • 痛みがだんだん強くなっている、強い痛みが続いている
  • 発熱を伴う
  • お腹全体が痛い、押すと強く響く、お腹の張りが強い
  • 血便が出た
  • 吐いてしまって、食事や水分がとれない
  • 冷や汗が出る、ふらつく、意識がぼんやりする——これは急ぐ。夜間・休日でも救急受診を検討してほしい

一度経験している人は「あのときと似た感じだ」と気づくことがある。ただしそれが再発とは限らないし、逆に別の病気のこともある。似ているからと自己判断で様子を見続けず、早めに連絡してほしい。

よくある質問

Q. 繰り返す場合、手術が必要になりますか?

A. 何度も繰り返す場合や、穿孔・膿瘍・狭窄・瘻孔といった合併症を起こした場合には、手術が検討されることがある。ただし「◯回繰り返したら手術」という一律の基準があるわけではない。回数だけで決めるのではなく、重症度、年齢、全身の状態、生活への支障の程度、手術による利益と負担をあわせて判断される。担当医とよく相談してほしい。

Q. 治ったあとの大腸カメラは、必ず受けないといけませんか?

A. 全員が必ず、というわけではない。1年以内にきちんとした大腸カメラを受けていて、短期間でのフォローが必要な所見もなかった場合は、省かれることがある。逆に、初めての憩室炎や、合併症を伴った場合は勧められることが多い。「なぜ勧められているのか」を聞いておくと納得しやすいと思う。

Q. もう一生、種のあるものは食べられませんか?

A. そんなことはない。ナッツ・トウモロコシ・ポップコーン・小さな種のある果物を避ける必要性については、現在は否定されている。この話は憩室があると言われた人向けの記事で詳しく書いたので、そちらを読んでほしい。

Q. 再発が心配で、食事が怖くなってしまいました

A. 痛みが強かった人ほど、こうなりやすい。ただ、過度な食事制限を長く続けることは、それ自体が体にとってよくない。栄養が偏るし、生活も窮屈になる。しかも、そこまでして再発を確実に防げるという根拠があるわけでもない。何を食べていいか分からなくなっているなら、そのまま我慢せず、外来でその不安を伝えてほしい。

まとめ

憩室炎は再発することがある。報告されている再発率は1年で約8%、10年でも約22%で、「一度なったら一生繰り返す」わけではない。ただしこの数字は重症度や定義によって変わるので、目安として受け取ってほしい。

治ったあとに覚えておいてほしいのは2つだ。ひとつは急性期の食事制限を、そのまま何年も続ける必要はないこと。落ち着いたら通常の食事に戻していい。

もうひとつは、治ったあとに勧められる大腸カメラは「別のものが隠れていないか」を確かめるためのものだということ。治療が終わっていないという意味ではない。

そして痛みがぶり返したときは、「前と同じだろう」と自己判断せず、早めに受診を。似ているようで違うこともある。

最終更新:2026年11月

参考
・日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026(改訂第2版)」(2026年)
・米国消化器病学会(AGA)Clinical Practice Update「憩室炎の診療」(2021年)——大腸内視鏡の適応・時期、再発リスク低減策
・憩室炎の再発率に関する疫学研究(Bharucha AE, et al. Am J Gastroenterol. 2015)
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。

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コンビニ医
消化器内科医2桁年目。胃腸・内視鏡・当直の話から、家事・時短・車・投資まで。忙しい人の暮らしを少しラクにする情報をゆるく発信。