大腸カメラで「憩室があります」と言われたまま帰ってきた人へ
大腸カメラを受けて、「憩室がありますね、経過観察しましょう」と言われてそのまま帰ってきた——という人は多い。
「憩室って何?」「放置していいの?」「食べてはいけないものがある?」。外来でよく聞かれる疑問だ。結論から言うと、症状のない憩室症は基本的に治療不要だ。ただし炎症(憩室炎)や出血(憩室出血)が起きたときは話が変わる。
この記事でわかること
・憩室症とは何か・なぜできるか
・症状のない憩室症とどう付き合えばいいか
・憩室炎・憩室出血のサインと、どのくらい急いで受診すべきか
憩室症とは
憩室とは、腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出したくぼみのことだ。大腸の壁には血管が通る弱い部分があり、そこに腸の中の圧力がかかり続けることで、少しずつ押し広げられてできると考えられている。
憩室は年齢が上がるほど見つかりやすく、大腸カメラでよく見つかる所見の一つだ。できる仕組みには、腸の壁の構造や加齢、遺伝的な要因などが関わると考えられていて、一つの原因だけでは説明できない。肥満・喫煙・運動不足や食事の内容は、主に憩室炎の起こりやすさとの関係が報告されている。
日本人は右側(上行結腸・盲腸のまわり)にできやすいのが特徴で、欧米では左側(S状結腸)が多いとされる。ただし日本でも、年齢が上がると左側の憩室が増えてくる。
症状のない憩室症——基本的に経過観察でいい
憩室があるだけで症状がない場合、特別な治療は必要ない。薬を飲み続ける必要もない。
日ごろ気をつけるとすれば、食物繊維の多いバランスのよい食事、適正な体重、運動、禁煙といった、ふつうの健康習慣だ。これらは憩室炎の起こりにくさと関係するという報告がある。また、解熱鎮痛薬(NSAIDs)やアスピリンなどの薬は憩室出血と関係することが知られているので、飲んでいる人は大腸カメラで憩室を指摘されたことを主治医に伝えておくといい(自己判断でやめないこと)。
憩室があっても、大腸がん検診や大腸カメラの間隔は、憩室とは別に年齢や他の所見で決まる。大腸カメラについては→大腸カメラが怖い人へ。内視鏡医がよく聞かれる本音を話します
外来でよくある誤解:「種のある食べ物は食べてはいけない」
「ゴマ・キウイ・いちごなど、種のある食べ物は憩室に詰まるから食べてはいけない」と信じている人は今でも多い。
これは古い考え方だ。アメリカで約4万7千人を18年間追いかけた大規模な研究では、ナッツ・トウモロコシ・ポップコーンを食べる人で、憩室炎や憩室出血が増えるという関連は見られなかった。小さな種を含むいちごやブルーベリーについても同じだった。すべての種が一つずつ調べられたわけではないが、症状のない人が、憩室があるという理由だけでこうした食べ物を一律に避ける根拠はない。外来でもよく聞かれる疑問だ。
憩室炎——炎症が起きたとき
憩室に炎症が起きた状態が憩室炎だ。
症状は、同じ場所が続けて痛む腹痛、発熱、吐き気など。日本では右側の憩室が多いので、右下腹部が痛むことも多く、虫垂炎(盲腸)とよく似ている。左側の憩室炎では左下腹部が痛む。どちらか片側だけと決めつけないことが大事だ。虫垂炎との見分けについては虫垂炎の記事にも書いた。
診断は、診察と血液検査に加えて、CTなどの画像検査で行う。軽症なら外来で治療できることも多く、抗菌薬を使うかどうかは重症度や体の状態を見て主治医が判断する。膿のかたまり(膿瘍)ができた、腸に穴があいた(穿孔)といった重症の場合は、入院や手術が必要になることもある。
憩室出血——血便が出たとき
憩室の近くを通る血管が破れて出血することがある。突然、お腹の痛みをほとんど伴わずに、赤〜暗赤色の血便がまとまって出るのが典型的だ。
自然に止まることも多いが、止まったからといって、血便を自己判断で放置しないでほしい。出血量が多いと、輸血や、内視鏡での止血、カテーテル治療、手術が必要になることもある。また、一度止まっても再び出血することが少なくない。血をサラサラにする薬を飲んでいる人は、自己判断でやめず、受診したときに必ず伝える(医師の判断で一時的に止めることはある)。
血便の原因について→血便が出たとき、「痔だから大丈夫」と思う前に確認してほしいこと
どのくらい急いで受診すべきか
すぐに救急車を呼ぶ
- 血便が出て、ふらつく・冷や汗が出る・意識がぼんやりする(出血量が多く見えなくても)
- 突然の激しい腹痛、激しい痛みが続く
今日中に受診する(夜間・休日なら救急外来)
- まとまった量の血便が出た(ふらつきなどはない)
- 腹痛と発熱が同時にある
- お腹の同じ場所の痛みが続く、だんだん強くなる
- 吐き気・嘔吐を伴う腹痛
早めに消化器内科の外来へ
- 少量の血便が続く、繰り返す
- 軽い腹痛を何度も繰り返す
これは目安で、症状が強いときは、この区分にかかわらず救急を受診してほしい。症状がなければ、急いで受診する必要はない。
よくある質問
Q. 憩室症は治りますか?
A. 症状がなければ、憩室そのものをなくすための治療は通常必要ない。憩室炎や出血が起きたときに早めに気づけるよう、サインを知っておくことが大事だ。
Q. 憩室があると、大腸がんになりやすいですか?
A. 憩室があるだけで、大腸がん検診や大腸カメラの間隔を短くする必要があるとはされていない。検査の間隔は、年齢、ポリープなどの所見、家族歴などに応じて決まる。なお、憩室炎を起こしたあとは、炎症に見えたものが実はがんだったということが見つかることがあるので、落ち着いてから大腸カメラで確認することがある。
Q. 憩室炎を繰り返す場合はどうすればいいですか?
A. 繰り返す場合や、膿瘍・狭窄などの合併症がある場合は、問題のある腸を切除する手術を検討することがある。回数だけで決まるわけではなく、重症度や生活への影響、年齢などを考えて、消化器内科・外科と相談して決める。
まとめ
- 症状のない憩室症は、基本的に経過観察でいい
- 種のある食べ物を避ける必要はない
- 日本では右側の憩室が多く、憩室炎は右下腹部の痛みとして出ることも多い
- 憩室出血は、痛みのない血便が突然まとまって出るのが典型。再出血も少なくない
- 大量の血便でふらつくときは救急車。腹痛と発熱、まとまった血便は今日中に受診
大腸がんとの違いについて→大腸がんは「症状が出てから」では遅い
▶ 大腸カメラのことを、段階ごとにまとめました
憩室以外にも、大腸カメラでは「がん以外のもの」がいろいろ見つかる。検査そのものについては1ページに整理している。大腸カメラのすべて|怖い・費用・準備・結果まで、内視鏡医がまとめて答える
最終更新:2026年10月
参考
・日本消化管学会「大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン2026(改訂第2版)」
・Peery AF, et al. AGA Clinical Practice Update on Medical Management of Colonic Diverticulitis: Expert Review. Gastroenterology 2021
・Strate LL, et al. Nut, corn, and popcorn consumption and the incidence of diverticular disease. JAMA 2008
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
