大腸がんは「症状が出てから」では遅い。消化器内科医が伝えたい、今すぐできる予防と検査の話
大腸がんは、日本でかかる人も、亡くなる人も、がんの中で上位に入る身近ながんだ。それだけ多いのに、「症状が出てから受診する」人がまだ多い。
この記事でわかること
・大腸がんが「症状が出てから」では見つけにくい理由
・大腸がんのリスクを上げる要因と、日常でできること
・検診(便潜血検査)と大腸カメラの使い分け
大腸がんは、症状が出にくいがんだ
問題は、大腸がんが早期にはほとんど症状を出さないことだ。進行していても症状がないことがある。血便・便通の変化・腹痛・体重減少といった症状が出てから見つかったときには、進行していることも少なくない。
内視鏡医として日々大腸カメラをやっている立場から言うと、早期で見つかったがんと進行がんでは、治療の負担もその後の経過も大きく違う。だから「症状がないうちに調べる」ことに意味がある。
大腸がんのリスクを上げる要因
- 年齢:年齢とともにリスクが高くなる
- 家族歴:親・きょうだい・子どもに大腸がんの人がいると、リスクが高くなる
- 赤肉・加工肉:WHOの国際がん研究機関(IARC)は、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、赤肉を「おそらく発がん性がある」と分類している。IARCは、加工肉の習慣的な摂取量が1日50g多いと、大腸がんの相対リスクが約18%高くなると評価している
- 飲酒・喫煙:どちらも大腸がんのリスクと関連する
- 肥満・運動不足:体を動かさないことや肥満はリスクを上げる
- 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患:大腸がんのリスクに関係する
年齢と家族歴は変えられないが、食事・飲酒・運動は今日から変えられる。
予防のためにできること
食物繊維を増やす
食物繊維を多くとる人では大腸がんのリスクが低いという関連が、海外の研究を含む複数の研究で示されている(日本人の研究では結果が必ずしも一致していない)。野菜・豆類・全粒穀物を意識的に増やすのが基本だ。
赤肉・加工肉を減らす
牛肉・豚肉などの赤肉、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉は、とりすぎないようにしたい。「ゼロにする」必要はないが、毎日・毎食となる状態は避けたい。
体を動かす
体をよく動かす人ほど大腸がんが少ないことが、複数の研究で示されている。ハードな運動でなくてもよく、ウォーキングなどを日常に取り入れるところから始めればいい。
飲酒・喫煙を控える
アルコールと喫煙はどちらもリスク因子だ。たばこは禁煙を。お酒は、がん予防の観点では飲まないのが望ましく、飲む人はまず量を減らすところから始めればいい。
外来でよくある誤解:「生活に気をつけているから、検診はいらない」
食事や運動に気をつけるのは大事だが、それで大腸がんがゼロになるわけではない。生活習慣で下げられるのはリスクの一部で、年齢や体質によるリスクは残る。生活習慣の改善は、対象年齢で受ける検診の代わりにはならない。健康的な生活をしている人こそ、検診も続けてほしい。
検診と大腸カメラ:何をいつ受けるか
便潜血検査(大腸がん検診)
市区町村で行われる大腸がん検診は、症状のない40歳以上の人が、年1回の便潜血検査を受けるのが基本だ。国立がん研究センターの検診ガイドライン(2024年度版)では、便潜血検査(免疫法)を最も高い推奨(グレードA)とし、40歳で始めて74歳で終えるのが望ましいとしている。45歳・50歳からの開始や、2年に1回の実施も選択肢として示されている。
陽性が出た場合は、必ず精密検査(通常は大腸カメラ)を受けてほしい。「陽性=がん確定」ではないが、放置は絶対にNGだ。便潜血をもう一度受け直しても、精密検査の代わりにはならない。陽性と言われたまま放置している人に向けては、別の記事で詳しく書いた。
大腸カメラ(内視鏡検査)
大腸カメラは、ポリープを見つけて、その場で切除できることもある検査だ。ただ、症状のない人を対象に、大腸カメラを最初の検査として行う方法は、同じガイドラインで、市区町村などの対策型検診としては「実施を推奨しない」(グレードC)とされている。人間ドックなどの任意型検診では、利益と不利益の説明を受けたうえで、本人が判断して受けることができる。なお、これは検診としての評価で、便潜血が陽性になったあとの精密検査や、症状がある人の大腸カメラの大切さを否定するものではない。
一方、家族に大腸がんの人がいる人、血便などの症状がある人は、検診の年齢や結果を待たずに、消化器内科で相談してほしい。何歳から何を受けるかは大腸カメラは何歳からの記事にまとめた。
大腸カメラについては以下の記事にもまとめてある。
- 大腸カメラが怖い人へ。内視鏡医がよく聞かれる本音を話します
- 大腸カメラ前日・当日の過ごし方完全ガイド
- 大腸カメラの費用はいくら?保険適用の条件
- 大腸カメラの鎮静剤、使った方がいい?
- 大腸カメラでポリープが見つかったら?
よくある質問
Q. 便潜血検査が陰性なら、大腸がんの心配はないですか?
A. 陰性でも完全に安心とは言えない。早期のがんやポリープでは陰性になることがあるので、続けて受けることに意味がある。また、症状がある場合は、検診の結果にかかわらず受診してほしい。
Q. 若いので大腸がんは関係ないですか?
A. 年齢が上がるほど多いがんだが、若い世代でも起こる。血便や続く便通の変化などがあれば、年齢に関係なく受診してほしい。
Q. サプリメントで予防できますか?
A. 大腸がんの予防を目的にサプリメントに頼ることは、勧められていない。一部の成分ではリスク低下との関連が報告されているが、効果と不利益をあわせて考える必要がある。まずは食事全体、運動、禁煙、節酒といった基本と、対象年齢になったら検診を受けることを優先してほしい。
まとめ:症状が出る前に動く
- 大腸がんは早期にはほとんど症状がない。進行していても気づかないことがある
- 食物繊維を増やし、赤肉・加工肉・飲酒・喫煙を減らし、体を動かす
- 生活習慣の改善は、検診の代わりにはならない
- 症状のない人は40歳から便潜血検査。陽性なら必ず精密検査へ
- 家族歴や症状がある人は、年齢を待たずに消化器内科へ
「症状がないから大丈夫」は大腸がんには通用しない。早めに動いておくことが、一番の予防だ。
▶ 大腸カメラのことを、段階ごとにまとめました
検診の次に来るのが、大腸カメラの話だ。受けるか迷っている段階から検査後の結果まで、1ページに整理している。大腸カメラのすべて|怖い・費用・準備・結果まで、内視鏡医がまとめて答える
最終更新:2026年10月
参考
・国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」
・国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」「大腸がん検診について」「最新がん統計」
・国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がんの予防・検診」
・IARC Monographs Volume 114: Red Meat and Processed Meat(2018年刊行、評価の発表は2015年)
・Aune D, et al. Dietary fibre, whole grains, and risk of colorectal cancer. BMJ 2011
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
