胃がんのリスク、ピロリ菌だけじゃない——予防と定期検査の考え方
胃がんは日本人に多いがんの一つだ。近年は減少傾向にあるが、それでも年間約4万人が胃がんで亡くなっている。高齢の方に多いがんだが、50代・60代でも決して珍しくはない。
「ピロリ菌を除菌したから大丈夫」と思っている人は多い。ただ、除菌してもリスクがゼロにはならないこと、ピロリ菌以外にも複数のリスク因子があることはあまり知られていない。
この記事でわかること
・胃がんの主なリスク因子(ピロリ菌だけではない)
・ピロリ菌除菌後も注意が必要な理由
・予防のために今できることと定期検査の考え方
胃がんの主なリスク因子
ピロリ菌(最大のリスク)
胃がんの原因として最も重要なのがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)だ。日本の胃がんの大部分は、ピロリ菌感染歴を持つ人に起こる。感染していない人の胃がんは非常にまれとされている。
ピロリ菌は胃の粘膜を慢性的に傷つけ、萎縮性胃炎→腸上皮化生→異形成→胃がんという流れで進行することがある。このプロセスには数十年かかることが多い。
ピロリ菌について詳しくは→ピロリ菌、除菌した方がいい?
塩分・塩蔵食品
塩分の多い食事・塩蔵食品(漬物・塩辛・干物など)の摂りすぎは胃がんのリスクを上げる。塩分が胃の粘膜を直接傷つけ、ピロリ菌の働きを助長するとされている。野菜・果物を積極的に摂ることもリスク低減につながる。
喫煙
喫煙は胃がんリスクを1.5〜2倍程度高めるとされている。タバコに含まれる発がん物質が胃の粘膜に影響を与える。禁煙することで、時間とともにリスクは低下していく。
家族歴
親・兄弟・子どもなど一親等に胃がんの人がいる場合、リスクが高くなる。遺伝的な要因に加え、家族内でのピロリ菌感染(幼少期の経口感染)も関係している。一親等に胃がんの方がいる場合は、ご自身だけでなく家族でピロリ菌検査を検討する価値がある。
外来でよくある誤解
「ピロリ菌を除菌したから、もう胃がんの心配はない」——外来でよく耳にする言葉だ。
実際には、除菌によって胃がんの発症リスクは大きく下がる。大規模な日本の研究でも、ピロリ菌を除菌した人は放置した人に比べて胃がんの発症が有意に少ないことが示されている。ただし、ゼロにはならない。除菌前にすでに萎縮性胃炎や腸上皮化生が進んでいた場合、除菌後もがんが発生することがある。除菌に成功しても定期的な胃カメラは必要だ。
ピロリ菌除菌後のフォローについて詳しくは→ピロリ菌を除菌したら、その後どうなるのか
予防のために今できること
- ピロリ菌検査・除菌:感染していれば除菌を受ける。これが最も効果的な予防策だ
- 塩分を控える:塩蔵食品の摂りすぎを避け、野菜・果物を積極的に摂る
- 禁煙:喫煙している場合は禁煙することでリスクを下げられる
- 定期的な胃カメラ:早期発見が最大の武器になる
定期的な胃カメラの考え方
胃がんは早期に発見できれば、内視鏡治療で根治できることも多い。「症状がない=胃は大丈夫」とは言えないため、一定の年齢になったら症状の有無にかかわらず定期的な検査を受けることが大切だ。
一般的な目安として:
- ピロリ菌陽性・除菌後 → 胃の状態(萎縮・腸上皮化生の程度)によって異なるが、1〜2年ごとの胃カメラを勧められることが多い。具体的な間隔は主治医と相談を
- ピロリ菌陰性・他に大きなリスクなし → 自治体検診(多くは2年に1回の胃検診)に合わせて2年に1回程度でも可
- 家族歴あり・萎縮性胃炎が強い → 1年ごとのフォローを勧められることもある。個々の状況に応じて主治医と相談してほしい
胃カメラについて詳しくは→胃カメラを怖がる人が知らない、たった一つのこと
よくある質問
Q. ピロリ菌陰性でも胃がんになりますか?
A. ごくまれにあります。ピロリ菌感染歴がない胃がんはEBウイルス関連胃がんや遺伝性胃がんなどが含まれますが、全体から見るとごく少ない割合です。ピロリ菌陰性であれば胃がんリスクは非常に低いといえます。
Q. 胃がんは遺伝しますか?
A. はっきりした遺伝性胃がんは、全体から見るとごく一部に限られます。多くの胃がんはピロリ菌・食生活・喫煙などの環境要因が主な原因と考えられています。ただし家族歴があれば検査を受けるタイミングを早めることを勧めます。
Q. 胃がんの早期症状はありますか?
A. 早期胃がんはほとんどの場合、症状がありません。胃の不快感・食欲低下・体重減少などが出たときにはすでに進行していることが多いです。40代以降で一度も胃の検査をしていない場合は、まず一度胃カメラを受けておくことをお勧めします。
まとめ
胃がんのリスクはピロリ菌だけではない。塩分・喫煙・家族歴も重要な因子だ。ピロリ菌を除菌してもリスクはゼロにはならないため、除菌後も定期的な胃カメラが必要だ。
早期発見できれば内視鏡治療で根治できる可能性が高い。症状が出てからでは遅いことが多い——これが定期的に胃カメラを受けてほしい一番の理由だ。
参考
・日本消化器病学会 胃がん治療ガイドライン
・国立がん研究センター がん情報サービス
・日本ヘリコバクター学会 ガイドライン
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年6月
