ピロリ菌を除菌したら、その後どうなるのか|治療の流れ・確認検査・フォローまで
「除菌の薬、飲み終わりました」
外来でそう言われたとき、内視鏡医として伝えておきたいことがある。除菌は、薬を飲み終えただけではまだ完了していない。判定の検査まで含めて、ひと区切りだ。
除菌するかどうかの判断や、薬がどう変わってきたかはピロリ菌、除菌した方がいい?にまとめた。この記事は「飲むと決めたあと」——7日間の注意、判定の検査、そして胃カメラとの付き合い方に絞る。
この記事でわかること
・判定検査を受けるまで、除菌は完了していない理由
・「除菌できた=胃カメラ卒業」とは限らない、内視鏡医としての理由
・自分の場合、次に何をすればいいか
薬を飲んでいる7日間に気をつけること
除菌は、胃酸を抑える薬1種類と抗菌薬2種類を、朝晩2回・7日間飲むのが基本だ。入院は要らない。
日本ヘリコバクター学会の「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版」では、一次除菌(アモキシシリンとクラリスロマイシンを使う組み合わせ)の場合、胃酸を抑える薬はPPIよりもP-CABのボノプラザンが推奨されている。二次除菌では、PPIとボノプラザンのどちらも選択肢になる。
飲み忘れや途中でやめてしまうことは、除菌がうまくいかない原因になる。軽い副作用であれば、飲み切ることを目指す。
軽い副作用と、止めて連絡すべき症状は分けて考える
よくある副作用は、下痢・軟便、味覚の変化(苦味など)、お腹の張りやむかつきだ。多くは軽く、飲み終わると落ち着いていく。つらいときも、自分の判断で飲み方を変えたり、飲む日数を延ばしたりせず、まず処方元に連絡してほしい。
ただし、次の症状は別だ。次の分を飲む前に、至急、処方元へ連絡するか受診してほしい。
- 発疹が出た
- 血の混じる下痢、強い腹痛がある
- 下痢がひどく、水分がとれない
ガイドラインでも、重い下痢が出た場合は除菌薬を中止するとされている。
そして、息苦しさ、顔やのどの腫れ、全身に広がるじんましんが出たときは、次の分は飲まずに、救急要請または救急受診をしてほしい。
ペニシリンアレルギーがある人は、先に伝える
除菌で使う抗菌薬のひとつ、アモキシシリンはペニシリン系だ。過去にペニシリン系の薬で、発疹、じんましん、息苦しさ、顔やのどの腫れ、意識が遠のく感じなどが出たことがある人は、処方の前に必ず伝えてほしい。
ペニシリンアレルギーがある場合、通常の保険診療で使う除菌の組み合わせは使えない。学会のQ&A(2016改訂版)では、保険適用の除菌療法は原則としてないとされている。一方、2024年版のガイドラインでは、薬剤感受性検査を踏まえた代わりの組み合わせが示されている(推奨の強さは付いていない)。どの治療ができるかは、対応できる施設で個別に決めることになる。
判定検査を受けるまで、除菌は完了していない
7日間飲み終えても、菌が消えたかどうかはまだわからない。判定の検査で確かめて、はじめて結果が出る。
判定は、抗菌薬を飲み終えてから少なくとも4週間あけて行う。早すぎると正しい結果が出にくい。
方法は主に2つある。
- 尿素呼気試験:検査用の薬を飲み、その前後の息を集めて調べる
- 便中抗原検査:便を提出して調べる
ここで気をつけたいのが、胃薬(PPIやP-CAB)との関係だ。胃薬を休む必要があるかどうかは、検査の方法によって変わる。
尿素呼気試験では、胃薬を飲んでいると、菌がいるのに「いない」と出てしまう(偽陰性)ことがある。そのため、PPIやP-CABは原則として検査前2週間やめてから行うとされている。
便中抗原検査は、使うキットによって胃薬の影響の受け方が違う。国内の一部のモノクローナル抗体を使う検査は、胃薬を続けたまま判定できる場合があるが、すべての便中抗原検査が同じではない。
ただ、胃薬を止めることで症状や持病に差し支える人もいる。休薬するかどうか、どのくらい休むかは、自分で決めずに、検査を受ける医療機関の指示に従ってほしい。
結果によって、次にやることが変わる
- 除菌できていた → ここからは胃カメラとの付き合いになる(次の見出しへ)
- 除菌できていなかった → 抗菌薬の組み合わせを変えて、二次除菌を行う。二次除菌までは保険が使える
- 二次除菌でも除菌できなかった → 次の治療は、原則として保険診療の対象外になる。使う薬や期間は、薬剤耐性やアレルギー、ほかに飲んでいる薬などを踏まえて、専門医と相談して決める
- 判定検査をまだ受けていない → まず受ける。結果を知らないまま「除菌は済んだ」と思っていないか、一度確かめてほしい
外来でよくある誤解:「除菌できた=胃カメラ卒業」
除菌が成功すると、「これで胃がんの心配はなくなった」と受け取る人は多い。日本消化器内視鏡学会も、除菌の成功で安心して検診を受けなくなるケースが問題になっていると指摘している。
除菌が成功したことだけを理由に、胃カメラを自己判断で終わらせないでほしい。2024年版のガイドラインでも、現時点では経過観察が不要な人を見分けることができないとして、除菌後の長期的な経過観察がすすめられている。理由は3つある。
1. リスクは下がるが、ゼロにはならない
除菌で胃がんのリスクは下がる。ただ、長年の感染でできた萎縮(胃の粘膜が薄くなった状態)は、除菌しても残りやすい。そのぶんのリスクは残る。萎縮そのものについては「萎縮性胃炎ですね」と言われたまま、放置していませんかに詳しく書いた。
2. 除菌後に見つかる胃がんは、見分けが難しいことがある
ここは内視鏡をやっている側として、いちばん伝えたいところだ。
除菌したあとに見つかる胃がんは、表面を異型の乏しい組織が覆い、内視鏡では胃炎のような所見に見えることがあるため、見分けが難しくなると報告されている。
だから除菌後の胃カメラは、除菌したことを伝えたうえで、適切な内視鏡観察を受けることに意味がある。
3. 何年もたってから見つかることがある
人間ドックの胃内視鏡検診で見つかった除菌後の胃がん45例を調べた国内の報告では、20.0%が除菌から10年以上たってから見つかっていた。
1つの施設の検診データなので、すべての除菌後の人に当てはまる割合ではない。ただ、長い期間にわたってリスクが残りうることを示すデータだ。除菌後の胃カメラをいつまで続ければいいかは、現時点では結論が出ていない。
胃カメラの間隔は、人によって違う
「除菌後は何年ごと」と、一律に決まっているわけではない。2024年版のガイドラインでは、重い萎縮、腸上皮化生、胃がんの治療歴などのリスクを評価して、一人ずつ間隔を設定するべきとされている。
自分の場合を考えるときは、次のように分けてほしい。
- 胃がんを内視鏡で治療したことがある → 治療した医療機関の方針に従う。治療した場所とは別に、新しくがんができることにも注意が要る
- 萎縮が強い、または腸上皮化生があると言われた → 間隔は主治医と相談して決める。次の予定を具体的に決めておく
- 自分の萎縮の程度を聞いたことがない → 次の胃カメラで聞く。それが間隔を決めるいちばんの材料になる
胃カメラそのものが不安な人は、胃カメラのすべてから読んでほしい。
除菌後に起こりうる、体の変化
胸やけが出ることがある。除菌後に胃酸の分泌が回復し、胸やけや逆流の症状が一時的に出たり、強くなったりすることがある。日本では報告があるが、すべての人に起こるわけではなく、多くは軽症だ。症状が続く、または強いときは相談してほしい。
胃もたれなどが良くなる人もいる。ただし全員ではない。症状が残るときは、ほかの原因も含めて相談する。
こんなときは、連絡・受診を
すぐに救急へ
- 除菌の薬を飲んでいる間に、息苦しさ、顔やのどの腫れ、全身に広がるじんましんが出た → 次の分は飲まずに救急要請・救急受診
- 吐血した、または黒い便に加えて、ふらつき・冷や汗・意識がぼんやりする症状がある → 救急要請も検討する
当日〜数日のうちに、連絡・受診
- 除菌の薬を飲んでいる間に、発疹、血の混じる下痢、強い腹痛が出た、または下痢がひどく水分がとれない → 次の分を飲む前に処方元へ至急連絡
- 食べ物がつかえる、原因のわからない体重減少がある
次の受診で、落ち着いて相談
- 除菌後、胸やけが続いている
- 判定検査の結果をまだ聞いていない
- 次の胃カメラの予定が決まっていない
よくある質問
Q. 除菌の薬を飲んでいる間、お酒は飲めますか?
A. 2024年版のガイドラインでは、二次除菌で使うメトロニダゾールは、飲酒によって腹痛、嘔吐、顔の紅潮などの反応が起こることがあるため、二次除菌中は飲酒を避ける必要があるとされています。一次除菌中の飲酒も含め、処方のときに確認し、薬の説明書(電子添文)や薬局での説明も確認してください。
Q. 薬を飲み忘れてしまいました。
A. 自分の判断で飲む日数を延ばしたり、まとめて飲んだりせず、処方した医療機関か薬局に相談してください。
Q. 除菌後の胃カメラは、いつまで続ければいいですか?
A. 現時点で結論は出ていません。除菌から10年以上たって胃がんが見つかる例も報告されています。除菌前の萎縮の程度や胃がんの治療歴などによって考え方が変わるので、続けるかどうか、どのくらいの間隔にするかは主治医と決めてください。
まとめ:除菌は、判定検査まで含めて完了
- 軽い副作用なら飲み切ることを目指す。発疹・血便・強い腹痛・水分がとれない下痢は、次の分を飲む前に至急連絡。息苦しさやのどの腫れは救急へ
- ペニシリンアレルギーがある人は、処方の前に伝える
- 判定検査を受けるまで、除菌は完了していない。胃薬を休むかどうかは検査の方法やキットで変わるので、医療機関の指示に従う
- 除菌成功だけを理由に、胃カメラを自己判断で終わらせない。除菌後の胃がんは見分けが難しいことがあり、何年もたってから見つかることもある
- 胃カメラの間隔は一律ではない。萎縮の程度を聞いて、次の予定を主治医と決めておく
胃がん予防では、除菌したあとの判定と、リスクに応じた経過観察も大切だ。「除菌した」と伝えて、次の胃カメラの予定を決めておく。まずはそれだけでいい。
参考
・日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版」(2024年11月)
・日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版Q&A」(ウェブ掲載、参照日:2026年9月14日)
・日本消化器内視鏡学会「ピロリ菌を除菌しましたが、その後胃カメラ検査を受ける必要がありますか?」(ウェブ掲載、参照日:2026年9月14日)
・兒玉雅明、水上一弘、村上和成「Helicobacter pylori除菌治療後の内視鏡診療の役割と重要性」日本消化器内視鏡学会雑誌 2024;66(4):373-384
・満崎克彦ほか「胃内視鏡検診で発見された除菌後胃癌―除菌後サーベイランス期間の検討―」日本消化器がん検診学会雑誌 2022;60(4):639-649
※処方された薬の詳細は、電子添文や薬局での説明をご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年9月
