「お腹が痛くて、背中まで抜けるような痛みがある」

これは急性膵炎のサインかもしれない。みぞおちや左上腹部の強い痛みがお腹の奥から背中へ突き抜けるように響く——この「放散痛」は膵炎に特徴的な症状だ。放置すると急速に悪化し、命に関わることもある。

この記事でわかること
・急性膵炎の症状と受診すべきサイン
・原因の9割を占めるアルコールと胆石の話
・「軽症」でも入院が必要な理由

急性膵炎とは何か

膵臓は胃の裏側に横たわる臓器で、消化酵素とインスリンを作っている。急性膵炎は、この消化酵素が何らかの原因で膵臓自体を消化し始めてしまう状態だ。

軽症で済めば数日の絶食・点滴で回復するが、重症化すると膵臓壊死・多臓器不全に進展し、数日でICU管理が必要になることもある。一般的な腹痛とは別物だ。

原因の9割はアルコールと胆石

急性膵炎の原因は大きく2つだ。

①アルコール性(約40〜45%)
大量飲酒・長期飲酒が膵臓にダメージを与えることで発症する。1回の大量飲酒で起きることもあれば、長年の飲酒習慣が引き金になることもある。アルコールが消化器に与える影響は膵臓だけにとどまらない。

②胆石性(約35〜40%)
胆嚢にできた石が胆管に落ちて詰まり、膵液の流れが止まることで膵炎が起きる。胆石を指摘されたことがある人は、急性膵炎のリスクを念頭に置いておく必要がある。

残り10〜20%は、薬剤・高中性脂肪血症・自己免疫性・原因不明などだ。

症状——「背中まで抜ける痛み」が特徴

急性膵炎の典型的な症状はこうだ。

みぞおちや左上腹部の強い持続する痛み
背中への放散痛(「背中まで抜ける」「締め付けられる」と表現されることが多い)
・吐き気・嘔吐
・発熱
・前傾姿勢で少し楽になる(膵臓への圧迫が減るため)

みぞおちの痛みにはさまざまな原因があるが、「背中まで響く」「前傾姿勢で少し楽」という組み合わせは膵炎を強く疑う。飲酒後や脂っこい食事の後に起きやすい点も特徴だ。

なお、心筋梗塞や大動脈解離でも似たような強い腹痛・背部痛が出ることがある。「なんとなくいつもと違う」と感じた場合は、自己判断せず早めに受診してほしい。

外来でよく聞く誤解

「胃が痛いだけだと思って様子を見ていた」
急性膵炎の痛みは胃痛と区別しにくいことがある。ただし通常の胃痛と違うのは「痛みが持続して改善しない」「背中まで響く」「吐いても楽にならない」という点だ。胃潰瘍・十二指腸潰瘍との鑑別も必要になるため、強い腹痛が続く場合は自己判断せず受診してほしい。

「我慢できる程度だから様子見でいい?」
軽症でも原則として入院・絶食・点滴が必要だ。膵臓を休ませながら輸液で循環を維持し、膵虚血の進行を防ぐことが治療の基本になる。食事を続けると消化酵素の分泌が増え、炎症が悪化する。我慢できるからといって自宅で様子を見ていい病気ではない。

受診すべきサイン

以下の症状があれば、救急も含めて早急に受診してほしい。

30分以上続く強い腹痛
・背中まで響く痛み
・吐き気・嘔吐を伴う
・発熱がある
・飲酒後または脂っこい食事の後に起きた

特に血圧低下・意識の変容・腹部全体が板のように固くなる場合は重症サインだ。すぐに救急搬送が必要になる。

よくある質問

Q. 急性膵炎は繰り返しますか?

A. 原因を取り除かないと再発する。アルコール性であれば禁酒、胆石性であれば胆嚢摘出術を行うことで再発リスクを下げられる。再発を繰り返すと慢性膵炎に移行することがあるため、原因の治療が重要だ。

Q. 急性膵炎の治療中、いつから食事できますか?

A. 症状が落ち着いてから段階的に再開する。最初は水分のみ、次に流動食・粥、その後通常食と移行する。脂肪分の多い食事は膵臓に負担をかけるため、回復後もしばらく脂っこいものは控えた方がいい。

Q. 膵炎になったことがある人は、お酒を完全にやめないといけませんか?

A. アルコール性膵炎であれば、禁酒が強く推奨される。「少量なら」という考え方は再発・慢性化のリスクを高める。完全に断つことが最善だ。

まとめ

急性膵炎は「背中まで抜ける腹痛」が特徴で、アルコールと胆石が主な原因だ。軽症でも入院・絶食が必要で、自宅で様子を見ていい病気ではない。強い腹痛・背部痛・嘔吐が重なる場合は、迷ったら我慢せず、その時点で消化器内科か救急を受診してほしい。

参考
・日本膵臓学会 急性膵炎診療ガイドライン
・国立がん研究センター がん情報サービス
・厚生労働省 関連資料
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。

最終更新:2026年7月

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コンビニ医
消化器内科医2桁年目。胃腸・内視鏡・当直の話から、家事・時短・車・投資まで。忙しい人の暮らしを少しラクにする情報をゆるく発信。