外来でたまに聞かれる。「先生、この検査っていくらかかりますか?」

正直に言うと、「その場で正確な金額」はわからない。

知識がないわけじゃなくて、構造上わからない。同じ検査でも患者によって払う額が変わるし、そもそも医師は治療の判断をする人間であって、請求業務は別の部門がやっている。「いくらですか?」と聞くなら、受付か医事課が正解だ。

ただ、せっかくなので今回は「日本の医療費の仕組み」と「実際の検査・処置の価格感」をまとめてみる。知っておくと、健診や受診のときに損をしにくくなる。

日本の医療費はどう決まるのか

日本の保険診療は「診療報酬点数」という国が定めたルールで価格が決まっている。すべての検査・処置・薬に「点数」がついていて、1点=10円。保険診療は全国一律なので、どの病院でも点数が同じなら基本の料金は変わらない。そこに患者の負担割合(1割・2割・3割)をかけたものが実際の支払い額になる(10円未満は切り捨て)。

負担割合は年齢・所得によって変わる。現役世代は原則3割、75歳以上の後期高齢者は原則1割(所得によっては2割・3割)、子どもは自治体によって無料〜2割とバラバラだ。だから同じ検査でも、患者によって窓口で払う額が変わる。これが「いくらですか?」に即答できない理由の一つだ。

実際の検査・処置、いくらかかる?

消化器内科でよく行う検査・処置を中心に、2024年度の診療報酬をもとにまとめた。3割負担の場合の目安として見てほしい。

検査・処置点数3割負担(目安)
胃カメラ(上部内視鏡)1,140点約3,420円
大腸カメラ(全大腸)1,550点約4,650円
大腸ポリープ切除(2cm未満)5,000点約15,000円
大腸ポリープ切除(2cm以上)7,000点約21,000円
胃ESD(早期がん)18,370点約55,000円
大腸ESD(早期がん)22,040点約66,000円
CT検査(腹部・単純)施設によって異なる約7,000〜8,000円
CT検査(造影)施設によって異なる約11,000円前後

同じCTやMRIでも、撮影範囲・造影の有無・読影の加算などで点数が変わる。ここでは「よくあるパターンの3割負担の目安」として見てほしい。また、これは基本点数の目安であり、麻酔・加算・入院費などが加わると実際の請求は変わる。

胃カメラや大腸カメラは、保険が効けば思ったより安い。「内視鏡って高いんじゃないか」と思っている人が多いが、3割負担なら胃カメラは3,000円台、大腸カメラも5,000円弱で受けられる。

一方でESDは別格だ。早期がんに対する内視鏡治療なので致し方ないが、3割負担でも5〜6万円台。さらに入院費が別途かかるので、実際の請求はもっと高くなる。ただ、外科手術と比較すれば体への負担は圧倒的に少ない。

保険診療 vs 人間ドック——同じ検査でこんなに違う

「同じ検査なのに、健診でやると高くなる」——これは多くの人が感じる疑問だ。

理由はシンプルで、症状があって受診すれば保険診療、症状なしで健診・ドックでやれば自費診療になるからだ。自費は保険のルールが適用されないので、病院が自由に価格を設定できる。

例えば大腸カメラ。保険適用なら3割負担で約4,650円。人間ドックや自費で受けると施設によって30,000〜60,000円になる。同じ医師が同じ機械を使って同じ検査をしても、「なぜ来たか」によって払う額がこれだけ変わる。

これを知っておくと実際に得をする場面がある。健診で「要精密検査」と言われた場合、医師の診察を経て必要と判断された精密検査は保険が適用される。健診結果を持って消化器内科を受診すれば、同じ大腸カメラでも大幅に安くなる可能性が高い。

高額療養費制度も知っておくといい

ESDや入院が必要な治療になったとき、3割負担でも金額が大きくなる。そこで使えるのが高額療養費制度だ。

ひと月の医療費が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度で、上限額は所得によって変わる。一般的な所得の人なら、ひと月の上限はおおよそ80,000〜90,000円程度が目安だが、正確な上限額は加入している健康保険や所得区分によって異なるので、保険証に記載の保険者か市区町村窓口で確認してほしい。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払いを最初から抑えられる。

「いくらですか?」と聞きたいときは

医師に聞いても即答できないことが多いので、正直に言う。受付か医事課(会計窓口)に聞くのが一番正確だ。

「この検査をしたらいくらになりますか?」と事前に聞けば、担当者が計算して教えてくれる。遠慮せずに聞いていい。むしろ、事前に把握しておく方が双方にとってスムーズだ。

まとめ

  • 医療費は「診療報酬点数×10円×負担割合」で決まる。全国一律の仕組みだが、患者の負担割合が異なるため払う額は人によって変わる
  • 胃カメラ・大腸カメラは保険適用なら3,000〜5,000円台。思っているより安い
  • 同じ検査でも、保険診療と自費(健診・ドック)で払う額が大きく変わる
  • 健診で「要精密検査」になったら、消化器内科を受診すれば保険が適用される
  • 入院が必要なときは高額療養費制度を事前に確認する
  • 価格を正確に知りたいときは受付・医事課に聞くのが正解

医療費の仕組みを知っていると、同じ治療でも選択肢の幅が広がる。「なんとなく高そう」で受診を後回しにする前に、一度確認してみてほしい。

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コンビニ医
消化器内科医10年目。内視鏡専門医・大学院生・2児の父。 忙しい勤務医目線で「本当に使えるもの」「本当に正しい医療情報」だけを発信します。