大腸カメラで「憩室があります」と言われたまま帰ってきた人へ
大腸カメラを受けて、「憩室がありますね、経過観察しましょう」と言われてそのまま帰ってきた——という人は多い。
「憩室って何?」「放置していいの?」「食べてはいけないものがある?」。外来でよく聞かれる疑問だ。結論から言うと、無症状の憩室症は基本的に治療不要だ。ただし炎症(憩室炎)や出血が起きたときは話が変わる。
この記事でわかること
・憩室症とは何か・なぜできるか
・無症状の憩室症はどう付き合えばいいか
・憩室炎・憩室出血のサインと受診の目安
憩室症とは
憩室とは、腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出したくぼみのことだ。大腸の壁には血管が通る弱い部分があり、そこに腸内の圧力がかかり続けることで少しずつ押し広げられてできる。
加齢・食物繊維の不足・便秘・肥満・喫煙・NSAIDsの常用などがリスク因子とされている。40代以降に増え始め、高齢になるほど見つかりやすい。大腸カメラを受けた人の中でよく発見される所見の一つだ。
日本人は右側(上行結腸・盲腸周囲)にできやすい特徴がある。欧米では左側(S状結腸)が多いとされており、人種差がある。
無症状の憩室症——基本的に経過観察でいい
憩室があるだけで症状がない場合、特別な治療は必要ない。
食物繊維を十分に摂って便秘を防ぐ、水分をしっかり取る——この2点が憩室炎・憩室出血の予防につながると言われている。他の疾患の有無や年齢に応じて、必要に応じて大腸カメラを行うことも選択肢だ。
大腸カメラについて→大腸カメラが怖い人へ。内視鏡医がよく聞かれる本音を話します
外来でよくある誤解
「種のある食べ物(ゴマ・キウイ・いちごなど)は食べてはいけない」と信じている人が多い。
これは古い説であり、現在のガイドラインでは種や硬い食べ物を避ける必要性は否定されている。「種が憩室に詰まって炎症を起こす」という考え方は根拠が乏しく、制限は不要だ。外来でこの誤解を持って来る患者さんは今でも多い。
憩室炎——炎症が起きたとき
腸内細菌の関与や内圧上昇などにより憩室に炎症が起きた状態が憩室炎だ。
症状は腹痛・発熱・吐き気だ。右側の憩室炎は虫垂炎(盲腸)と症状が似ており、鑑別が必要になることがある。左側の憩室炎は下腹部の痛みとして現れることが多い。
日本では軽症であれば外来で抗菌薬による治療が行われることが多い。近年、欧米では軽症例に対して抗菌薬を使わずに経過を見るケースも報告されているが、日本ではまだ抗菌薬治療が主流だ。重症の場合や穿孔(穴が開く)が起きた場合は入院・手術が必要になることもある。
憩室出血——血便が出たとき
憩室の近くを走る血管が破れて出血することがある。突然大量の血便が出るのが特徴で、腹痛を伴わないことが多い。
約7〜8割は自然に止まるとされているが、出血量が多い場合は輸血・内視鏡的止血・手術が必要になることもある。血便が大量に出た場合はすぐに受診してほしい。
血便の原因について→血便が出たとき、「痔だから大丈夫」と思う前に確認してほしいこと
受診すべきサイン
- 腹痛+発熱が同時にある(憩室炎の疑い)
- 突然大量の血便が出た
- 腹痛が強い・持続する
- 吐き気・嘔吐を伴う腹痛
無症状であれば緊急性はないが、上記のいずれかが出た場合は早めに消化器内科を受診してほしい。
よくある質問
Q. 憩室症は治りますか?
A. 一度できた憩室は自然には消えません。ただし無症状であれば治療の必要はなく、食生活の改善で憩室炎・出血のリスクを下げることが目標になります。
Q. 憩室があるとがんになりやすいですか?
A. 憩室症自体は大腸がんのリスク因子ではありません。ただし大腸カメラで憩室が見つかった場合、ポリープや他の病変がないかも同時に確認されます。定期的な検査は引き続き受けてください。
Q. 憩室炎を繰り返す場合はどうすればいいですか?
A. 繰り返す場合は手術(問題のある腸管を切除する)を検討することがあります。頻度・重症度・生活への影響を考慮して消化器外科と相談することになります。
まとめ
憩室症は「見つかっても基本的には経過観察」だ。食べ物の制限は不要で、食物繊維・水分摂取で予防を心がけることが大切だ。
腹痛+発熱・突然の大量血便が出た場合は憩室炎・憩室出血を疑って早めに受診してほしい。
大腸がんとの違いについて→大腸がんは「症状が出てから」では遅い
参考
・日本消化器病学会 大腸憩室症診療ガイドライン
・国立がん研究センター がん情報サービス
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年6月
