肝臓のすべて|健診で数値を指摘されたら、どこから読めばいいか
健診の結果に、肝機能の項目だけ印がついていた。
調べてみると、脂肪肝、お酒、肝炎、いろんな言葉が出てくる。どれが自分に当てはまるのか、わからないまま閉じてしまう——そういう人が多い。
この記事は、その入口をまとめたものになる。順番に読む必要はない。自分に当てはまるところから読んでほしい。
この記事でわかること
・数値が正常なときに、それでも確かめておきたいこと
・自分の場合、次に何を調べればいいのか
・すぐ受診すべき場合と、結果票を持って相談すればいい場合の線引き
外来でよくある誤解:「数値が正常なら、肝臓は調べなくていい」
最初に言っておくと、肝機能の数値が正常なのは、基本的にはよい知らせだ。そこは安心してもらっていい。
そのうえで、ひとつ知っておいてほしいことがある。
ALTは主に肝細胞の障害を反映する酵素だ。ASTも肝細胞の障害で上がるが、肝臓以外に筋肉や心臓、赤血球にも含まれている。だから激しい運動のあとや筋肉の病気でもASTが上がることがある。
そして大事なのはここだ。
脂肪性肝疾患では、肝臓の線維化が進んでいてもAST・ALTが正常範囲におさまっていることがある。これは診療ガイダンスでも明確に指摘されていて、AST・ALTの正常値だけで、進んだ線維化がないとは言い切れない。
つまり、こういう整理になる。
- 数値が高い=すぐに重症、ではない
- 数値が正常=まずはよい知らせ。ただしそれだけで線維化を否定できるわけではない
では、他に何を見るのか。ひとつが血小板だ。慢性の肝疾患が進んだ段階では、血小板が下がってくることがある。
ただし血小板が下がる原因は肝臓以外にもたくさんある。感染症、血液の病気、薬、栄養状態——単独では判断できない。医療機関では、年齢・AST・ALT・血小板を組み合わせたFIB-4という指標などを使って、線維化のリスクを見積もることがある。
数字を自分で組み立てて自己判断する必要はない。ただ、健診結果を持っていくときは、肝機能の欄だけでなく血小板の欄も一緒に見せてほしい。判断の材料が増える。
① まず、どの項目が動いているかを確認する
「肝機能」とひとくくりにされるが、項目ごとに意味が違う。どれが高いかで、疑う方向が変わる。
- ALT——主に肝細胞の障害で上がる
- AST——肝細胞の障害で上がるが、筋肉などでも上がる
- γ-GTP——お酒や、胆汁の流れの問題で上がりやすい
- ALP——胆汁の流れが滞ると上がる。ただし骨の病気や成長、妊娠でも上がる
- ビリルビン——高くなると黄疸につながる。体質的に少し高い人もいる
ALT・AST・γ-GTPの詳しい読み分け——両方高いとき、γ-GTPだけ高いとき、ASTだけ高いとき——は肝機能の数値が高い原因にまとめている。まずここを読んでから、下の切り分けに進んでほしい。
なお、ALPやγ-GTPが目立って高いときは、肝臓そのものより胆道(胆のう・胆管)の問題のことがある。ただしALPだけで胆道の病気と決めることはできない。ビリルビン、腹部の症状、腹部エコーなどと合わせて判断する。健診のエコーで胆石を指摘されている人は胆石・胆嚢ポリープと言われた人へもあわせてどうぞ。
② 次に、原因を切り分ける
ここからは、当てはまるものを読んでほしい。複数が重なっている人も多い。
お酒に心当たりがある
量と頻度で肝臓への負担は変わる。ただ、お酒が影響するのは肝臓だけではない。食道・胃・大腸にも別の形で効いてくる。
お酒はあまり飲まない
それでも脂肪肝になる。体重の増加、内臓脂肪、糖尿病、脂質異常症、高血圧——こうした代謝の異常と関連して起こる脂肪性肝疾患は、MASLD(マスルド)と呼ばれるようになった。
「太っていないから関係ない」とも限らない。
肝炎ウイルスを調べたことがあるか
ここは飛ばさないでほしい。B型・C型の肝炎ウイルスは、症状がないまま長く経過する。そして治療法がある。
とくにC型は、この10年で治療が大きく変わった。飲み薬でウイルスを排除できる可能性が非常に高くなっている。ただしすでに線維化や肝硬変が進んでいる場合は、ウイルスが消えたあとも肝臓の経過観察や肝がんの検査が必要になることがある。「消えたら終わり」ではない。
▶ C型肝炎は「治る病気」になった
▶ B型肝炎、「昔治ったから大丈夫」が危ういわけ
一度も検査したことがなければ、受診のときにそのことを伝えて、検査を相談してください。B型・C型肝炎の検査は、自治体の保健所や委託医療機関で受けられる場合がある。対象の条件や予約方法は地域によって違うので、お住まいの自治体・保健所の案内を確認してほしい。
飲んでいる薬やサプリメント
薬が肝機能の数値に影響することがある。処方薬だけでなく、市販薬、漢方、健康食品、サプリメントも含めてだ。
心当たりがあっても自己判断で中止しないでほしい。持病の薬を勝手にやめるほうが危ないことがある。飲んでいるものを主治医や薬剤師に伝えて、そこから判断してもらう。お薬手帳と、飲んでいるサプリの現物か写真を持っていくのが確実だ。
③ 数値が正常でも、確かめておきたい人
冒頭の話に戻る。数値が正常でも、次に当てはまる人は一度きちんと調べておく意味がある。
- 肝炎ウイルスの検査を一度も受けたことがない
- 健診のエコーで脂肪肝を指摘されたことがある
- 糖尿病がある、または肥満・脂質異常症・高血圧がある
- 家族に肝臓の病気の人がいる
- お酒の量が多い状態が長く続いている
- 血小板が低め、または低下傾向が続いている
慢性の肝疾患は、症状が乏しいまま進むことがある。そして脂肪性肝疾患では、AST・ALTだけで線維化を評価しきれない場合がある。数値と画像の両方で見ていくのは、そのためだ。
受診の目安——3段階で考える
すぐに受診(救急も検討)
黄疸(白目や皮膚が黄色い)に加えて、次のいずれかがあるとき。
- 発熱・悪寒
- 強い腹痛、とくに右上腹部
- 繰り返す嘔吐
- 意識がぼんやりする、受け答えがおかしい
- あざができやすい、血が止まりにくい
これは翌日の外来を待つ場面ではない。胆管の炎症や急性の肝障害の可能性がある。
当日〜数日以内に受診
- 白目や皮膚が黄色い(症状がそれだけでも)
- 尿の色が濃い、便が白っぽい
- 数値が急に大きく上がった
- お腹が張ってきた、足がむくんできた
健診の結果票を持って相談
- 異常が繰り返し出ている、または前年より上がっている
- AST・ALTが基準の上限の2倍以上ある
- だるさが続いている
「2倍未満なら放っておいていい」という意味ではない。軽い異常でも、繰り返している・上がり続けているなら相談の対象になる。
よくある質問
Q. 数値が少しだけ高いのですが、放っておいていいですか?
A. 「少しだけ」がどのくらい続いているかによります。一度だけ軽く上がったのと、毎年じわじわ上がっているのとでは意味が違います。過去の健診結果を並べて、推移を見てください。それを持って受診すると話が早くなります。
Q. 肝臓にいいサプリを飲めば下がりますか?
A. サプリメントは、原因を調べることや治療の代わりにはなりません。むしろ健康食品やサプリメントが肝障害の原因になることもあり、国内の調査でも薬物性肝障害の一定割合を占めています。使用中の製品があれば、医師や薬剤師に必ず伝えてください。大事なのは「なぜ上がっているのか」を先に確かめることです。
Q. お酒をやめれば正常に戻りますか?
A. アルコールが主な原因なら、減らす・やめることで改善が期待できます。ただしお酒が原因とは限りません。飲まない人の脂肪肝も、ウイルス性肝炎も、薬の影響もあります。「禁酒したのに下がらない」場合は、別の原因を調べる必要があります。
Q. 健診の再検査、どこに行けばいいですか?
A. 消化器内科、または内科で対応できます。健診の結果票を持っていってください。過去数年分あるとなお良いです。血液検査に加えて、腹部エコーで肝臓の状態を見ることが多くなります。
Q. エコーで「脂肪肝」と言われましたが、症状は何もありません
A. 脂肪肝は、ほとんどの場合症状が出ません。症状がないことは、進行していないことの証明にはなりません。もちろん脂肪肝のすべてが進行するわけではないので、過度に不安になる必要もありません。だからこそ、リスクの高い人を見つけて重点的に見ていく、という考え方をします。
まとめ
- 肝機能が正常なのは、まずはよい知らせ。ただしAST・ALTの正常値だけで、進んだ線維化を否定できるわけではない
- ASTは筋肉などでも上がる。ASTだけ高いときは肝臓以外も考える
- 血小板は線維化を見る材料のひとつ。ただし単独では判断できない。医療機関では年齢・AST・ALT・血小板を組み合わせて評価する
- 原因は、お酒・脂肪肝(MASLD)・肝炎ウイルス・薬やサプリメント・胆道の問題などを並行して調べる
- 肝炎ウイルスを一度も調べていないなら、受診時に必ず伝える
- 黄疸に発熱・強い腹痛・意識の変化を伴うときは、救急受診を検討する
肝臓は、痛みで知らせてくれない臓器だ。だから数字と画像で見ていくしかない。
健診で指摘されたことは、悪い知らせではなく見つけられたということだ。そこから調べていけばいい。
参考
・日本消化器病学会・日本肝臓学会 編『MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)——代謝機能障害関連脂肪性肝疾患——』(2026年4月)
・日本肝臓学会『B型肝炎治療ガイドライン(第5版)』(2026年6月)
・日本肝臓学会『C型肝炎治療ガイドライン(第8.4版)』(2025年4月)
・厚生労働省「肝炎総合対策の推進」(肝炎ウイルス検査の実施・助成)
・医薬品医療機器総合機構(PMDA)「重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害」
・AASLD Practice Guidance on the clinical assessment and management of nonalcoholic fatty liver disease. Hepatology. 2023.
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年9月
