大腸がんは、高齢者の病気だと思われがちだ。実際、年齢が上がるほど増えるのは事実で、日本でも40代後半から罹患率が上がり始め、50歳以降でその傾向がはっきりしてくる。ただ近年、50歳未満という比較的若い層での発症が増える傾向にあるという報告が、国内外から出ている。そして若い人ほど、症状が出ても「痔だろう」「ストレスだろう」と受け流されやすい。今日は、若い世代がこのテーマをどう受け止めればいいかを整理したい。

この記事でわかること
・若い世代で大腸がんが増えていると言われる背景
・若いからこそ見過ごされやすい理由
・年齢に関係なく、確認しておきたい症状

「若い世代で増えている」とは、どういうことか

まず正確に捉えておきたい。大腸がんは今も、圧倒的に中高年以降に多い病気だ。日本では40代後半から罹患率が上がり始め、50歳以降で特に増えていく。だからこそ国の対策としても、50歳以上に対して重点的な受診勧奨が行われている。20代・30代で大腸がんになる人の割合そのものは、依然として小さい。

そのうえで問題になっているのは、50歳未満という比較的若い層での発症が、以前と比べて増える傾向にあると報告されていることだ。背景として、食生活の変化、肥満、運動不足、飲酒・喫煙などの生活習慣の影響が指摘されているが、原因がすべて解明されているわけではない。

つまり「若い人も危ない」と怖がるべき話ではなく、「若いから絶対にありえない、とは言い切れない」という受け止め方が実態に近い。ここを取り違えると、必要以上に不安になるか、逆に完全に他人事になるかのどちらかに振れてしまう。

外来でよくある誤解:「若いから、がんではないでしょう」

血便が出た若い人が受診したとき、本人も周囲も、そして時に医療者側も「若いから痔だろう」と考えやすい。実際、若い人の血便では痔が原因のことが多く、その判断自体が的外れというわけではない。

問題は、その前提が強すぎると確認そのものが行われないまま時間が過ぎることだ。血便を痔と決めつけないという話は以前も書いたが、若い人こそ、この思い込みが働きやすい。

もう一つ、若い世代は多くの場合、検診の対象になっていないという事情もある。日本の対策型の大腸がん検診は40歳以上が対象とされており、それ以前の世代には便潜血検査を受ける機会が自動的に回ってくるわけではない。だから「症状が出たときに動くかどうか」が、より重要になる。

若い世代と大腸がん、どう受け止めるか まず、事実の整理 ・日本では40代後半から罹患率が上がり始め、50歳以降で特に増える ・そのうえで、50歳未満での発症が増える傾向にあると報告されている 若い世代で見過ごされやすい理由 ・「若いから痔だろう」という思い込みで、確認が行われないまま時間が過ぎる ・多くの場合、対策型検診(40歳以上が対象)の対象外にあたる 年齢に関係なく、受診のきっかけにしたい症状 ・血便が繰り返す/出血が続く ・便が細い状態が続く(単独では判断できない) ・便通のパターンが明らかに変わった ・原因のわからない体重減少 ・貧血を指摘された ・血のつながった家族に大腸がんの人がいる ※いずれも大腸がんに特有の症状ではありません。気になるときは自己判断せず受診を

年齢に関係なく、確認しておきたい症状

若い人であっても、次のような症状が続くときは、年齢を理由に様子見にしないでほしい。なお、ここに挙げるものはいずれも大腸がんに特有の症状ではなく、もっとありふれた原因で起こることのほうが多い。あくまで「受診して確認するきっかけ」として捉えてほしい。

  • 血便が繰り返す、出血が続く:痔であっても、それを確認したうえで痔だと分かるのが望ましい
  • 便が細い状態が続く:ただしこれ単独で何かを判断できるものではなく、ほかの症状と合わせて考えるものだ
  • 便通のパターンが明らかに変わった:急に始まった便秘や、続く下痢など
  • 原因のわからない体重減少:意図しない体重減少は年齢を問わず確認すべきサインだ
  • 貧血を指摘された:特に男性や閉経後の女性の鉄欠乏性貧血は、消化管からの出血を考える必要がある

そして、血のつながった家族に大腸がんの人がいる場合は、年齢に関係なく一度相談しておく価値がある。家族歴がある場合、目安として「その家族が診断された年齢より10歳若い時点」あるいは「40歳」のいずれか早いほうから検査を考える、という考え方が示されることがある。ただし何親等に何人いるかなどで方針は変わるため、自己判断せず相談してほしい。

では、若いうちから検査を受けるべきか

「増えているなら、若くても大腸カメラを受けたほうがいいのか」と聞かれることがある。だが、症状も家族歴もない20代・30代が、全員一律に検査を受ける必要があるとは言えない。検査には手間も負担もあるし、対象を広げれば必ず得になるという単純な話でもない。

現実的なのは、「症状があるなら年齢を言い訳にしない」「家族歴があるなら早めに相談する」「対象年齢になったら検診を受ける」という三段構えだ。何歳から受けるべきかの一般的な目安は別の記事で整理しているので、あわせて参考にしてほしい。

また、生活習慣が背景として指摘されている以上、予防としてできることにも意味がある。若いうちから飲酒・喫煙・体重に向き合っておくことは、大腸に限らず長い目で意味を持つ。

よくある質問

Q. 20代でも大腸がんになりますか?

A. 頻度としては非常に少ないが、ゼロではない。ただ、それを理由に過度に不安になる必要はない。大事なのは「若いから絶対ない」と決めつけて、症状があるのに確認しないことを避けることだ。

Q. 血便が出ましたが、痛みがあるので痔だと思います。

A. 排便時の痛みを伴う出血は痔であることが多いのは確かだ。ただ、痔と大腸の病気は同時に存在することもある。繰り返す場合や、量が多い場合、便通の変化を伴う場合は、一度確認しておくと安心につながる。

Q. 家族に大腸がんの人がいます。何歳から検査すればいいですか?

A. 何親等に何人いるか、その人が何歳で診断されたかなどによって、すすめられる開始年齢は変わる。目安として「その家族が診断された年齢より10歳若い時点」または「40歳」のいずれか早いほうが示されることがあるが、一律に決まるものではない。まずは家族歴があることを医師に伝えて相談してほしい。

最終更新:2026年10月

参考
・国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」
・国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」
・大腸癌研究会「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2024年版」
・厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。

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