「脂肪肝です」と言われたまま放置している人へ
「脂肪肝って言われたけど、特に症状ないし大丈夫やろ」
外来をやっていると、こういう人に毎年のように会う。健康診断で脂肪肝を指摘されて、でも体調は普通だから放置している。気づいたら数年たっていた、というパターンだ。
結論から言うと、脂肪肝を指摘されたら、まず一度、原因と「肝臓が硬くなっていないか」を確かめてほしい。その結果で、生活習慣を見直しながら経過を見ればいい人と、肝臓の硬さを測る検査まで進んだほうがいい人に分かれる。そして、その違いは症状では見分けられない。医師として正直に説明する。
この記事でわかること
・脂肪肝とは何か、お酒を飲まなくてもなる理由
・放置すると何が問題になるのか
・何をすればいいか、どんなときに受診すべきか
脂肪肝とは何か
肝臓の細胞に中性脂肪がたまりすぎた状態だ。顕微鏡で見て、肝臓の細胞の5%以上に脂肪がたまっていると脂肪肝とされる。
健康診断では、主に腹部エコー(超音波検査)で見つかる。脂肪がたまった肝臓は、エコーで白っぽく明るく写る。ALT・ASTといった肝臓の数値が上がっていることも多いが、数値が正常の人もいる。健診でとてもよく見つかる、ありふれた所見だ。ただ、ありふれているから安心していい、というわけではない。
脂肪肝の原因は「お酒」だけじゃない
脂肪肝と聞くと「飲みすぎ」のイメージがあるが、お酒以外の原因でも脂肪肝は起こる。
多いのは、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧といった、いわゆる「メタボ」に関係する脂肪肝だ。2023年に国際的に名前が見直され、今はMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と呼ばれている。以前のNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)におおむね対応する名前だが、今は肝臓の脂肪に加えて、血糖・血圧・脂質・体格などの代謝のリスクがあることを確かめて診断する。日本の診療ガイドラインも2026年にこの新しい名前で改訂された。健診の結果や昔の説明で、どちらの名前も目にすると思う。
なお、代謝のリスクがあって、お酒もある程度の量を飲む人は、MetALD(代謝とお酒の両方が関わる脂肪性肝疾患)という別の区分になる。お酒を飲む人の脂肪肝は、原因が一つとは限らない。
外来でよくある誤解:「お酒を飲まないから、脂肪肝は関係ない」
「お酒は飲まないのに、なんで?」と驚く患者さんは多い。でも、食べすぎ・運動不足・甘い飲み物などが重なると、お酒を飲まなくても脂肪肝は十分に起こる。そして、太っていなくても脂肪肝になる人はいる。
もう一つの誤解が、「症状がないから大丈夫」だ。脂肪肝は、かなり進むまでほとんど症状が出ない。症状がないことは、安心の理由にならない。
放置するとどうなるのか
メタボに関連する脂肪肝(MASLD)には、脂肪がたまっていることが中心の状態と、肝臓の細胞の傷みや炎症を伴うMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)がある。MASHは以前NASHと呼ばれていたものだ。脂肪が中心の状態なら、生活習慣の見直しで肝臓の脂肪が減ることがある。
これとは別に見ておく必要があるのが、線維化(肝臓が硬くなること)がどのくらい進んでいるかだ。線維化が進むと肝硬変になることがあり、肝臓がんのリスクも上がる。肝硬変や肝臓がんなど、肝臓の病気の今後を考えるうえで特に重要なのが、この線維化の程度だとわかってきている。
また、脂肪肝のある人は、心臓や血管の病気にも気をつける必要がある。肝臓だけの問題ではない、ということだ。
問題は、MASHかどうか、線維化がどのくらい進んでいるかが、症状でも、エコーの見た目だけでも、ALTやASTの数値だけでもわからないことだ。
肝臓の硬さは、どうやって調べるのか
今は、いきなり肝臓に針を刺す検査(肝生検)をすることは少ない。まず、ふつうの採血の結果(年齢・AST・ALT・血小板数)から計算する「FIB-4」という指標で、線維化が進んでいる可能性がどのくらいあるかを見る。そこで可能性があると判断されたら、肝臓の硬さを測るエコー(エラストグラフィ)などの検査に進む。肝生検は、それでも判断がつかないときなどに検討する。
FIB-4は肝臓の硬さを直接測るものではなく、硬くなっている可能性を見積もる指標だ。年齢や持病によって判断が変わるので、自分で計算した数字だけで安心したり、怖がったりしないでほしい。健診の数値の読み方については肝機能の数値の記事に書いた。
何をすればいいのか
脂肪肝の治療の中心は、薬ではなく生活習慣の見直しだ。
太り気味の人では、減量が重要な治療になる。海外のガイドラインでは、肝臓の脂肪を減らすには体重の5%以上、炎症の改善には7〜10%、線維化の改善には10%以上を、続けて減らすことが目標として示されている(この量を減らせば必ずよくなる、という意味ではない)。急に大きく減らそうとせず、続けられるペースで進めればいい。
- 食事:食べすぎを減らす。甘い飲み物やお菓子など、糖分のとりすぎに気をつける(果糖の多い清涼飲料水は、量によっては肝臓に脂肪をためやすい)
- 運動:ウォーキングなどの有酸素運動や筋トレを、無理のない範囲で習慣にする。体重があまり減らなくても、運動そのものに肝臓の脂肪を減らす効果があるとされている
- お酒:お酒が原因の脂肪肝なら禁酒が基本。MASLDでも飲酒は控えることが勧められる。特に、線維化が進んでいる人や肝硬変の人は禁酒が必要だ
「薬で治したい」という人も多い。薬を使うかどうかは、肝臓の線維化の程度や、糖尿病などの合併している病気を見て、医師が個別に判断する。どの場合も、生活習慣の見直しが土台になることは変わらない。
こんな場合は受診してほしい
救急を受診する(意識がおかしい、大量に吐血したときは119番)
- 血を吐いた、黒くタールのような便が出た
- 急に受け答えがおかしくなった、意識がはっきりしない
放置せず、早めに医療機関に相談する
- 白目や皮膚が黄色くなってきた(黄疸)
- お腹が急に張って大きくなってきた、足のむくみが新しく出てきた
結果票を持って、かかりつけ医か消化器内科へ
- ALTが30 U/Lを超えている(日本肝臓学会の「奈良宣言2023」の目安)
- 血小板数が少ないと言われた
- 糖尿病がある、または肥満・脂質異常症・高血圧が重なっている
- 生活習慣を見直しても、数値やエコーの結果がよくならない
- 脂肪肝を何年も指摘されたまま、一度も詳しく調べたことがない
肝臓の数値を指摘されたときに、どこから調べればいいかは肝臓の道案内の記事にまとめてある。
よくある質問
Q. 脂肪肝は治りますか?
A. 体重を減らしたり運動を続けたりすることで、肝臓の脂肪が減り、エコーの所見がよくなることがある。ただし、エコーの見た目がよくなっただけでは、線維化までよくなったかはわからない。線維化がある人は、生活習慣の見直しを続けながら、定期的に経過を見ていく必要がある。
Q. ALTやASTが正常なら、脂肪肝は気にしなくていいですか?
A. そうとは限らない。数値が正常でも、肝臓の線維化が進んでいる人はいる。特に糖尿病がある人や、何年も脂肪肝を指摘されている人は、一度医療機関で相談しておくといい。
Q. 太っていないのに脂肪肝と言われました。
A. 太っていなくても脂肪肝になる人はいる。内臓脂肪のつき方、筋肉量、食事の内容、お酒などが関係する。体重が普通でも、指摘されたら放置しないでほしい。痩せ型の脂肪肝については痩せているのに脂肪肝、の記事で詳しく書いた。
まとめ
- 脂肪肝はお酒を飲まなくても、太っていなくても起こる
- 肝臓の病気の今後に特に関わるのは、肝臓の硬さ(線維化)。症状やエコーの見た目、数値だけではわからない
- 線維化のリスクは、まず採血から計算するFIB-4などで見積もり、必要に応じて硬さを測るエコーで調べる
- 線維化が進んでいる人は禁酒。吐血・黒い便・意識の変化は救急へ
- 治療の土台は、体重・食事・運動・お酒の見直し
- ALTが30を超える、糖尿病がある、何年も放置している人は、一度受診を
健康診断の結果を見てこのページにたどり着いた人は、まず生活習慣を見直しつつ、一度、肝臓の硬さまで確かめておいてほしい。
最終更新:2026年10月
参考
・日本消化器病学会・日本肝臓学会「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」
・日本肝臓学会「奈良宣言2023」
・Rinella ME, et al. A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. Hepatology 2023
・EASL–EASD–EASO Clinical Practice Guidelines on the management of MASLD(2024)
・Rinella ME, et al. AASLD Practice Guidance on the clinical assessment and management of nonalcoholic fatty liver disease(2023)
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
