「みぞおちが痛い」は胃だけの問題じゃない。消化器内科医が教える原因と受診の目安
みぞおちが痛い、と言って外来に来る人は多い。そして多くの人が「胃が悪いんだろう」と思って来る。気持ちはわかるが、みぞおちのまわりには胃以外にも多くの臓器がある。原因を胃だけに絞って考えると、見落としが起きる。
この記事では、みぞおちの痛みで考える主な原因と、どのくらい急いで受診すればいいかを整理する。
この記事でわかること
・みぞおちの痛みで考える主な原因(胃以外も含めて)
・痛む場所や痛み方から考えられること、その限界
・救急車・今日中・早めの外来、どのくらい急ぐべきかの目安
外来でよくある誤解:「みぞおちが痛い=胃が悪い」
みぞおちの奥には、胃と十二指腸のほかに、食道の下の端、胆のう、膵臓、肝臓がある。さらに、心臓の病気(狭心症や心筋梗塞)が、みぞおちの痛みとして出ることもある。
「胃薬を飲んでいたけれど、実は胆石だった」「胃が痛いと思っていたら、虫垂炎の始まりだった」ということは、私の外来でも経験する。胃薬で様子を見るのが悪いわけではないが、この記事の後半にある受診の目安に当てはまるときは、胃だと決めつけずに受診してほしい。
みぞおちの痛みで考えられる主な原因
① 機能性ディスペプシア(FD)
検査や診察で症状を説明できる病気が見つからないのに、みぞおちの痛み・胃もたれ・すぐにお腹がいっぱいになる感じなどが慢性的に続く病気だ。胃カメラで異常が見つからないことも多いが、胃カメラが正常というだけで診断が決まるわけではない。胃の動きの乱れや、胃が刺激に敏感になっていることに加え、ストレスなどの心理的な要因も関わっていると考えられている。
詳しくは機能性ディスペプシアの記事にまとめてある。
② 胃食道逆流症(GERD・逆流性食道炎など)
胃酸が食道に逆流して、みぞおちから胸にかけて焼けるような感じや痛みが出る。酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)を伴うことも多い。食後や、横になったときに悪化しやすい。食道にただれがあるものを「逆流性食道炎」と呼び、ただれがなく症状だけがあるタイプも含めて「胃食道逆流症(GERD)」という。
症状のチェックや詳細は逆流性食道炎の記事を参照してほしい。
③ 胃・十二指腸潰瘍
ピロリ菌の感染や、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の使用によって、胃や十二指腸の粘膜が深く傷つく。十二指腸潰瘍では空腹時や夜中に痛み、食事で一時的に楽になることがある。胃潰瘍では食後に痛むこともある。ただし、痛みのタイミングだけで胃か十二指腸かは決められない。黒い便が出たら、出血している可能性があるサインだ。
市販薬で様子を見ていいかどうかの目安は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の記事に、ピロリ菌についてはピロリ菌の記事に書いた。
④ 胆石発作・胆のう炎
胆石が胆のうの出口に詰まると、みぞおちから右の肋骨の下にかけて強い痛みが出る。「波のある痛み」と思われがちだが、典型的な胆石発作では、痛みが強まって一定の強さになり、あまり波を打たずに30分以上、ときに数時間続く。食後や夜間に起こりやすく、夜中に痛みで目が覚めることもある。背中や右の肩甲骨の下に痛みが広がることもある。「胃痛」と思っていたら胆石だった、というのは外来でよくある話だ。
なお「30分以上」は痛みの特徴の説明であって、受診まで待つ時間ではない。痛みが続く、熱が出る、白目や皮膚が黄色くなる(黄疸)といったときは、胆のう炎や胆管炎を起こしている可能性があり、その日のうちの受診が必要だ。胆石と胆のうポリープの違いはこちらの記事にまとめてある。
⑤ 急性膵炎
膵臓はみぞおちの奥、背中側にある。急性膵炎では、みぞおちから背中に抜けるような強い痛みが続き、吐き気や嘔吐を伴うことが多い。前かがみになると少し楽になることがある。日本では、お酒と胆石が二大原因だ。
詳しくは急性膵炎の記事に書いた。
⑥ 虫垂炎(盲腸)の始まり
虫垂炎は「右下腹部の痛み」と思われているが、最初はへそのまわりやみぞおちの痛みとして始まり、その後、右下腹部が痛くなってくることがある。これが典型的な経過だが、すべての人がこのとおりになるわけではない。みぞおちの痛みのあとに右下が痛くなってきたら、早めに受診してほしい。詳しくは虫垂炎の記事に書いた。
⑦ 心臓の病気(狭心症・心筋梗塞)
消化器の病気ではないが、見落としてはいけないので入れておく。心筋梗塞では、胸の痛みに加えて、みぞおちの痛みや吐き気が出ることがある。胸の痛みがはっきりしない場合もあり、特に高齢の人や糖尿病のある人では注意が必要だ。女性でも胸の痛みは主な症状だが、吐き気や息苦しさなどを伴うことがある。冷や汗、息苦しさ、胸やみぞおちの圧迫感を伴うときは、迷わず救急車を呼んでほしい。
痛む場所で、ある程度の見当はつく。ただし決めつけない
| 痛む場所 | 考えやすいもの |
|---|---|
| みぞおちの真ん中 | 胃・十二指腸、胃食道逆流症、膵臓、心臓 |
| 右寄り〜右の肋骨の下 | 胆石発作・胆のう炎、十二指腸、肝臓 |
| 左寄り〜左の肋骨の下 | 胃、膵臓、大腸(便やガスがたまったとき)、心臓 |
| みぞおちから右下腹部へ移ってきた | 虫垂炎 |
ただし、これはあくまで目安だ。内臓の痛みは場所がはっきりしないことが多く、同じ病気でも人によって痛む場所が違う。実際の診断には、話を聞くこと、診察、血液検査や画像検査が必要になる。「みぞおちだから心臓ではない」「右だから胃ではない」とは言えない。場所よりも、次の受診の目安に当てはまるかどうかで判断してほしい。
どのくらい急ぐべきか——受診の目安
すぐに救急車を呼ぶ
- 冷や汗、息苦しさ、胸やみぞおちの締めつけ・圧迫感を伴う
- 突然の激しい痛み、激しい痛みが続く、お腹全体が硬くなって痛い
- 血を吐いた、真っ黒な便(タールのような便)が出た。量が多い、ふらつく、意識がぼんやりするときは特にためらわない
今日中に受診する(夜間・休日なら救急外来)
- 救急車を呼ぶほどではないが、痛みが続いている、またはだんだん強くなる
- 熱がある、白目や皮膚が黄色い(黄疸)
- 背中に抜けるような痛みがある
- 痛みが右下腹部に移ってきた
- 吐き続けて水分がとれない
早めに消化器内科の外来へ
- 市販薬を使っても、説明書(添付文書)にある目安の日数でよくならない、悪化する、繰り返す
- 体重が減ってきた、食欲がない
- 飲み込みにくい、食べ物がつかえる
- 食後の痛みを何度も繰り返す(胆石発作の可能性もある)
救急車を呼ぶべきか迷うときは、救急安心センター事業(#7119)に相談できる地域もある。
まず何科を受診すればいいか
急ぎでなければ、まず消化器内科を受診するのが基本だ。外来では消化器の病気が原因のことが多く、必要に応じて胃カメラや腹部エコー、血液検査で原因を絞り込める。胃カメラで分かるのは食道・胃・十二指腸の病気で、胆石や膵臓の病気はエコーや血液検査、CTなどで調べる。
症状が続いて原因がはっきりしないとき、胃カメラは有力な選択肢だ。怖くて避けている人には、鎮静剤を使う方法もある。苦痛の軽減が期待できる一方で、呼吸が弱くなるなどのリスクもあるため、使えるかどうかは体の状態を見て医師が判断する。胃カメラへの不安についてはこちらの記事にまとめてある。
よくある質問
Q. みぞおちの左側が痛いのは、胃ですか?
A. 胃が原因になることもあるが、膵臓や大腸(ガスや便がたまったとき)のこともあり、心臓の病気がみぞおちの痛みとして出ることもある。場所だけでは決められない。冷や汗や息苦しさがあれば救急車、それ以外は上の受診の目安を参考にしてほしい。
Q. 痛みが治まりました。受診しなくていいですか?
A. 痛みが治まっただけで、重い病気ではないとは言えない。痛んでいたときに冷や汗、息苦しさ、胸やみぞおちの圧迫感があった場合は、治まっていても救急に相談してほしい。そうした症状がなく、軽い痛みが短時間で完全に治まったなら、様子を見ることもある。ただし、食後に強い痛みが何度も起きるなら胆石発作の可能性があるので、外来で一度調べておくほうがいい。治まったあとに熱が出てきた、白目が黄色くなってきたときは、その日のうちに受診してほしい。
Q. 市販の胃薬で様子を見てもいいですか?
A. 受診の目安に当てはまらない軽い痛みなら、市販の胃薬で様子を見るのは一つの方法だ。ただし、説明書(添付文書)に書かれている「何日使ってもよくならなければ相談」という目安を守り、よくならない、悪化する、繰り返すときは受診してほしい。また、市販の痛み止め(解熱鎮痛薬)は胃を荒らすことがあるので、胃の痛みに対して自己判断で使うのは避けたほうがいい。
まとめ
- みぞおちの痛みの原因は胃だけではない。胆石、膵炎、虫垂炎の始まり、心臓の病気もある
- 胆石発作は「波のある痛み」より、一定の強い痛みが30分以上続くことが多い
- 痛む場所は目安になるが、それだけでは決めない
- 冷や汗・息苦しさ・圧迫感、突然の激痛や続く激痛、吐血・真っ黒な便は救急車。続く痛み・発熱・黄疸は今日中に受診
- 市販薬でよくならない、繰り返すときは、消化器内科で原因を確かめる
「たぶん胃だろう」と放置するより、一度きちんと調べておく方が安心できる。
最終更新:2026年10月
参考
・日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021—機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版)」
・日本消化器病学会「患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド2023」
・日本消化器病学会「消化性潰瘍診療ガイドライン2026(改訂第4版)」
・日本消化器病学会「胆石症診療ガイドライン2021」
・急性膵炎診療ガイドライン2021改訂出版委員会「急性膵炎診療ガイドライン2021(第5版)」
・日本腹部救急医学会ほか「急性腹症診療ガイドライン2025(第2版)」
・厚生労働省・総務省消防庁「救急車を呼ぶ目安(こんな時は迷わず119へ)」
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
