胃カメラのすべて|怖い・バリウムとの違い・結果まで、内視鏡医がまとめて答える
胃カメラについて、これまでいくつも記事を書いてきた。ただ、読む人がどの段階にいるかで、必要な情報はまったく違う。まだ受けるか迷っている人と、結果の紙を持って帰ってきた人とでは、知りたいことが別物だ。この記事は、その入口をまとめたものになる。
この記事でわかること
・胃カメラが実際に見ている範囲(思っているより広い)
・いま自分がどの段階にいて、どこを読めばいいか
・待ってはいけない症状と、その緊急度
外来でよくある誤解:「胃カメラは、胃を見る検査」
名前が「胃」カメラなので、無理もない。ただ、正式には上部消化管内視鏡という。見ているのは胃だけではない。
スコープはのどを通って食道を下り、胃を観察し、通常はその先の十二指腸まで進んでから戻ってくる。ひとつの検査で、食道・胃・十二指腸を見ている。(どこまで観察できるかは、手術を受けたあとの状態や通過のしやすさによって変わることがある)
これがわかると、外来で言われることの意味が変わってくる。
- 胸やけが続く → 食道を見たい
- 食べ物がつかえる → 食道を見たい
- 健診で鉄欠乏性貧血 → 胃や十二指腸から出血していないかを見たい
- みぞおちが痛い → 胃・十二指腸を確認したい
「胃は元気だから、自分には関係ない」とはならない。胃の調子と関係のない理由で、胃カメラをすすめられることはよくある。
先に、待ってはいけない症状の話をしておく
段階の説明に入る前に、ここだけ先に読んでほしい。「受けるか迷う」の対象にならない症状がある。
救急受診を考えてほしいもの
吐血した、または黒くてタールのようにベタつく便が出た——これは胃や食道から出血しているサインのことがある。
とくに、それに加えて強いふらつき・立ちくらみ・動悸・冷や汗・顔色が悪い・意識がぼんやりするのいずれかがあるときは、翌日の外来を待つ場面ではない。救急受診を検討してほしい。
検診を待たず、早めに受診してほしいもの
- 食べ物がつかえる、飲み込むときに痛い
- 体重が減ってきた(ダイエットしていないのに)
- 嘔吐をくり返す
- お腹にしこりを触れる
- 発熱をともなう
- 年齢を重ねてから、初めて出てきた症状
- 食道がん・胃がんの家族歴がある
これらは警告徴候と呼ばれ、診療のガイドラインでも「様子を見る前に調べる」側に置かれている。健診の順番を待つのではなく、症状として医療機関にかかってほしい。
① まだ受けるか迷っている段階
いちばん多いのは、「受けたほうがいいのは分かっているが、踏み切れない」という状態だ。理由は人によって違うので、当てはまるものから読んでほしい。
怖いから、踏み切れない
これがいちばんの壁になっている人は多い。ただ、怖さの中身は人によって違う。おえっとなるのが嫌なのか、スコープの太さが不安なのか、それとも何をされるかわからないのが怖いのか。中身がわかれば、それぞれに相談できることがある。
鎮静の考え方、経鼻という選択肢、当日の流れは胃のこと、正しく知ればこわくないにまとめている。
健診のバリウムでいいのでは、と思っている
どちらが常に優れているという関係ではない。バリウム検査は胃をふくらませて撮影し、粘膜の凹凸や形の変化を評価する検査。胃カメラは粘膜を直接見て、必要ならその場で組織を採れる検査だ。それぞれに向いている人がいる。
公平に比べたものを健診の「バリウム」と「胃カメラ」、どっちがいい?に書いた。会社の健診でバリウムしか選べない人向けの話も入れてある。
何歳から受けるべきか、わからない
自治体などが行う胃がん検診は、原則として50歳以上・2年に1回が目安とされている(自治体によって対象年齢も方式も違うので、お住まいの案内を確認してほしい)。
ただし、これは症状のない人が受ける「検診」の話だ。ピロリ菌の感染歴がある、萎縮性胃炎を指摘されたことがある、家族歴がある——こういう人のフォローは、検診の枠組みとは別に主治医と相談することになる。そして症状がある人は、検診を待つのではなく受診の場面になる。
検診と診療の違いを含めて、胃がんのリスクと予防で整理している。
② 受けるきっかけがある段階
症状や健診の結果があって、「これは受けたほうがいいのかな」と思っている段階だ。当てはまる入口から読んでほしい。
- みぞおちが痛い——胃とは限らない。膵臓や胆のうのこともある
- 胸やけが続く——市販薬で様子を見ていいか、いつ受診すべきか
- 検査で異常なしなのに、胃もたれが続く——機能性ディスペプシアの話
- 食べ物がつかえる・飲み込みにくい——「歳のせい」で片付ける前に
- 健診で貧血を指摘された——なぜ貧血で胃カメラなのか
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍が心配——原因と、受診が必要なサイン
ひとつ補足しておくと、みぞおちの症状がある人全員に、いますぐ胃カメラが必要というわけではない。年齢、症状の内容、これまでの経過、ピロリ菌の状況、上に挙げた警告徴候があるかどうか——そういったものを合わせて判断する。診療ガイドラインでも、上部内視鏡を全例に必須とはしていない。
ただし、警告徴候がある場合は別だ。そこは迷わず調べる側に倒す。
③ 結果を受け取った段階
検査は終わったが、紙に書かれた言葉の意味がよくわからない——この段階の人がいちばん多いかもしれない。
- 胃ポリープと言われた——多くは心配いらないが、タイプによる
- 萎縮性胃炎と言われた——胃がんの土壌になる理由
- ピロリ菌がいると言われた——除菌したほうがいいのか
- 除菌したあと、どうなるのか——判定・フォローの話
- 食道について指摘された——バレット食道と食道がんのリスク
結果を聞くときに、その場で確認しておくと後で困らないことが3つある。
- 組織を採ったか(生検)——採っていれば病理の結果が出る時期と、説明を受ける日を確認しておく
- ピロリ菌をどう扱ったか——調べたのか、どの方法で調べたのか。除菌歴がある人は、その後の判定が済んでいるかどうか
- 次はいつ受ければいいか——「また来てください」だけでは間隔がわからない
除菌に成功しても、胃がんのリスクはゼロにはならない。だから「除菌したから、もう検査は要らない」にはならない。ここは何度でも書いておきたい。
④ 胃カメラでは答えが出ないこともある
ここは、あまり書かれていない話だ。
症状があるのに、それを直接説明できる異常が胃カメラで見つからないことがある。そして多くの人は「気のせいだったのか」「大げさだったか」と受け取ってしまう。
そうではない。考えられる方向は2つある。
ひとつは、胃や十二指腸の働き・感じ方が関わっている場合。粘膜に傷がなくても、胃の広がり方や動き、痛みの感じやすさなど、複数の要因が重なって症状が出ることがある。これが機能性ディスペプシアと呼ばれるもので、治療の対象になる。「異常なし=どうしようもない」ではない。
もうひとつは、原因が胃カメラの届かない場所にある場合。みぞおちの痛みは、胆のうや膵臓が原因のこともある。そのときは症状や診察所見に応じて、腹部エコー・CT・血液検査などを追加していく。みぞおちが痛いときに考えることで、その切り分けを書いている。
「胃カメラで異常なし」は、ゴールではなく通過点のことがある。症状が続くなら、そのまま伝えてほしい。
よくある質問
Q. 胃カメラと大腸カメラ、同じ日に受けられますか?
A. 同じ日に続けて行える施設はあります。ただし、前処置の内容、飲んでいる薬(とくに血をサラサラにする薬)、体調、鎮静を使うかどうかで対応が変わります。鎮静を使う場合は、当日の運転ができないなどの制限もつきます。可能かどうかは施設によるので、予約のときに相談してください。大腸カメラのほうは大腸カメラのすべてにまとめています。
Q. 検査中に何をしているのか、見えないので不安です
A. 空気(または二酸化炭素)を入れて胃をふくらませ、粘膜のしわを伸ばして観察しています。お腹が張る感じがするのはそのためです。気になるところがあれば色素をかけたり、拡大して見たり、組織を少し採ったりします。組織を採る操作そのもので強い痛みを感じることは、通常ありません。ただし、のどの違和感や送気による張りは、それとは別に感じることがあります。
Q. 症状が何もなくても受ける意味はありますか?
A. あります。早い段階の胃がんは、自覚症状がないことが少なくありません。かなり進行しても症状が出ない場合もあります。逆にいえば、症状の有無だけで進行度は判断できません。ただし全員が今すぐ受けるべき、という話でもないので、年齢やリスクの考え方は胃がんのリスクと予防を見てください。
Q. 前に受けたとき、つらかったので二度と受けたくありません
A. つらさの理由はひとつではありません。のどの反射、空気を入れたときの張り、スコープの通る経路、そのときの不安、鎮静を使ったかどうか——いろいろな要素が重なります。
だから、「いつ、何が、どのくらいつらかったか」をできるだけ具体的に伝えてください。それが分かると、経鼻内視鏡、鎮静の使用、送気の方法など、施設ごとに検討できることがあります。
なお、鎮静は「使えば必ず楽になる」というものではなく、当日の体調・持病・飲んでいる薬・検査後の制限をふまえて決めるものです。いずれにしても、がまんで解決する問題ではありません。伝えてください。
まとめ
- 胃カメラは食道・胃・十二指腸を見る検査。「胃だけ」ではない
- 吐血・黒い便に、ふらつきや冷や汗をともなうときは救急受診を検討する。つかえる・体重減少・嘔吐の反復などは、検診を待たず受診する
- 胃がん検診の目安は50歳以上・2年に1回。ただし症状がある人は検診ではなく受診
- 結果を聞くときは「生検したか・ピロリはどう扱ったか・次はいつか」の3つを確認する
- 「異常なし」でも症状が続くなら、通過点のことがある。そのまま伝えてほしい
参考
・国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」「胃がん検診について」
・国立がん研究センター「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン 2014年度版」
・日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021——機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版」(警告徴候・内視鏡の位置づけ)
・日本消化器内視鏡学会「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン 第2版(2020年)」
・日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン 2024改訂版」
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針は主治医にご相談ください。
最終更新:2026年8月
